「福祉避難所」8施設に、配慮必要な高齢者らに対応/陸前高田市

▲ 備蓄倉庫を設けているほか、パーテーションをはじめ災害時利用も想定した備品充実も図る松原苑=陸前高田

 陸前高田市は今年春までに協定を結んだ「福祉避難所」8施設について、ホームページによる周知を始めた。高齢者や障がい児、妊産婦、乳幼児をはじめ、災害時に特別な配慮が求められる住民らを受け入れる二次避難所となる。災害時にまず一次避難所で命を守り、その後の中長期的な滞在を見据え、体調や家族構成などを勘案した上で身を寄せる流れを想定。協定を結んだ各施設では、東日本大震災の教訓をふまえた備えの強化を図る動きが広がる。

 

 市は津波などの危険から身を守るため一時的に避難する「一次避難所」は130カ所以上、一定期間過ごすための「二次避難所」は学校施設やコミセンなどの22カ所を定めた。さらに、要配慮者への対応充実を図るべく協定締結を進めてきた。

 主に高齢者対応の福祉避難所は▽地域密着型介護老人福祉施設・陸前高田(高田町)▽特別養護老人ホーム・高寿園(同)▽老人保健施設・松原苑(同)▽西部デイサービスセンター・竹の里(竹駒町)▽交流センター・やちだて(小友町)▽グループホーム・箱根山(小友町)──の6施設。障がい児らに対応するのが、▽障がい者支援施設「ひかみの園」(高田町)▽ふれあい教室(竹駒町)──となっている。

 8施設とも、津波被災を免れた高台に施設を構える。加えて市は、日常の利用者以外が滞在できるスペースを確保できることや、普段の業務を通じて認知症などに対応できるスタッフ体制、設備面にも配慮したという。協定では、市福祉事務所などからの紹介によって、要援護者らを受け入れる形を想定している。

 市によると、妊産婦や乳幼児については、高田町の県立高田病院再建隣接地に整備を計画している市保健福祉総合センター(仮称)で検討。当面は、かつては竹駒保育園仮園舎だったふれあい教室で対応するとしている。

 福祉避難所のうち、医療法人勝久会(木川田典彌理事長)が運営する松原苑では日常的に過ごす利用者の安全確保を想定し、数日分の食料や紙おむつ、カイロなどを完備。会議室やデイケアルームには利用者以外に200人程度身を寄せることが可能という。

 自家発電装置に加え、震災後は独自の水道も確保した。現在は外壁の補強が進むほか、日ごろから発電装置を職員が操作できるよう研修も重ねる。さらに、膝を曲げられるなど過ごしやすくなる簡易ベッドも保管。パーテーションは日常業務での使用に加え、避難所利用時のプライバシー確保策としても想定している。

 勝久会高田施設の入澤美紀子看護部長は「普段から感染症に対してはとくに危機感を持ち、施設に合った対策の徹底を図っている。こうした取り組みは、災害への備えにもつながる」と語る。さらに「避難した次の日には、避難者から話を聞くことも重要。災害時は、みなさんがいろいろな心配ごとをかかえている。これは、震災を体験したからこその気づき」と、心のケアにも気を配る。

 福祉避難所は、数カ月にわたる避難生活を強いられた東日本大震災時に、改めてその重要性が浮き彫りとなった。市は、日常生活に支障がある住民やその家族らが不安なく避難行動をとる環境整備も重要視している。

 さらに、その後の避難生活でも体調不良などに対応しやすい環境を整え、関連死を含めた犠牲者を出さないまちづくりにつなげる方針。また、障がい者や介護認定を受けている高齢者らの中で、同意があれば個人情報を自主防災組織などに提供するなど、個別的な支援充実に向けた体制構築も進めている。