「旅する三陸」ガイド発行、陸前高田ファンの女性が制作

▲ 完成した陸前高田のミニガイド。風景や食べ物などが満載

 「陸前高田のことをもっと身近に感じてもらいたい」と、愛知県名古屋市中区の写真店「フォトップス」店長の森田亜美さん(36)が個人で制作していたガイドブックが完成した。三陸を旅した際に見聞きした情報だけでなく、地元住民が撮影した写真なども盛り込み、〝高田の素顔〟が伝わるように仕上げた。この冊子は同店で販売され、三陸の魅力を人から人へと伝達している。

 

 地域の〝素〟の魅力伝える

 

 震災の翌年に同市を初めて訪れた森田さん。大津波によって「『何もなくなってしまった町』。そう聞いていた場所なのに、初めて訪れたその日から『ここにしかいない人たち』『ここでしか見られない景色』に心揺さぶられた」と言う。

制作者の森田さん。店長を務める店では陸前高田の写真展も開いている=名古屋市

制作者の森田さん。店長を務める店では陸前高田の写真展も開いている=名古屋市

 森田さんはこれまでも、陸前高田の住民が撮影した写真を店で展示するなどし、「こんなすてきなところがたくさんある」と名古屋で広めてきた。「被災地」としてではなく、「人も場所も魅力的で、何度も訪ねたくなる町」としての陸前高田を知ってほしい──。そのことを人に説明する時、陸前高田の魅力を詰めたガイドブックがあればもっと伝えやすいのに、と思い立ったのが今回制作に取り組んだきっかけだった。
 写真店に勤める森田さんらしく、完成したガイドブックはA5判のポケットアルバムサイズ。陸前高田未来商店街や箱根山テラス、ガーデンカフェ森の小舎をはじめ、三陸鉄道への乗車など、この夏に旅した様子をオールカラー全14㌻にまとめた。
 ユニークなのは「小さなねずみのぬいぐるみが旅をする」という体裁を取っていること。ねずみたちが旅を存分に〝満喫〟している様子は実に愛らしく、見る人をほのぼのとした気持ちにさせる。
 さらに、陸前高田市へ「丸ごと支援」の一環で派遣されていた名古屋市職員・西尾建人さんによる遊漁船体験ツアーの模様を掲載。また、陸前高田市立図書館スタッフらがレンズ付きフィルムで撮った写真も載せ、「地元の人だけが知る」地域の〝名所〟も紹介する。
 「ネットで調べるだけでは分からない、普段の陸前高田をリアルに伝えたい」そんな思いが強くあった森田さん。冊子は1冊300円で販売し、このうち100円を桜ライン311の活動のため寄付する。このガイドを手に取ってくれた人から、さらに別の人たちへと、同市の良さが広がっていってほしいと森田さんは願う。