テレワーク実証拠点開所、仕事と交流の創出目指す/大船渡市

▲ 盛中央団地内に整備されたテレワークセンターの開所を祝ってテープカットする関係者=大船渡市盛町

 インターネットなど情報通信技術の活用により都市部の仕事を地方に呼び込もうと、地方創生の観点から総務省が提唱する「ふるさとテレワーク」。その実証事業に取り組む大船渡市や大手の情報通信関連企業でつくる共同事業体は、災害公営住宅などとして供用している盛町の盛中央団地内に拠点を設け、14日に開所式を催した。都市部などからの働き手受け入れを本格化させ、大船渡の風土や魅力に触れてもらう機会も提供するなど、新たな人の流れや仕事の創出を目指すこととしている。

 

 盛中央団地内に整備、働き手の受け入れ本格化 

 

 この実証事業は地方創生戦略の一環で、全国で15の取り組みが採択された。大船渡での取り組みは、NTTコミュニケーションズ㈱(東京)、㈱情報通信総合研究所(同)、富士ソフト㈱(神奈川)の市外3企業と、同市出身の歌手・新沼謙治さんを代表取締役とする㈱地域活性化総合研究所、そして市が共同して行うもので、今夏始動した。

富士ソフトでは社員2人が常駐。職場の壁には大高美術部員の案をもとにした絵が描かれる=同

富士ソフトでは社員2人が常駐。職場の壁には大高美術部員の案をもとにした絵が描かれる=同

 津波浸水のため供用していない盛中央団地1階の3室を「ふるさとテレワークセンター」として改装。ソフトウェア開発を主に手掛ける富士ソフトのサテライトオフィスを置くほか、全国十数カ所に展開するテレワーカーら向けのシェアハウス「GEEK.HOUSE」(ギークハウス)利用者らの仕事場として活用する。
 テレワーカーには1次産業体験就労などの機会を提供し、地元側が情報通信の知識や技術を学ぶ場も設けていく。総事業費は約7000万円。
 開所式には関係者約20人が出席。戸田公明市長は「テレワークの作業そのものだけでなく、地域との交流を通じて地方で働くことを実感し、情報発信していただきたい」と期待を込めてあいさつ。
 NTTコミュニケーションズ・ソリューションサービス部の一瀬正則担当部長は「センターを中心に大船渡を盛り上げていければ」、富士ソフトの須藤勝常務執行役員は「一緒に仕事をしながら課題を洗い出し、定着させていきたい」と意欲を語り、テープカットでスタートを告げた。
 センターには移住者と地域の交流スペースとなるオープンゾーン、テレワーカーたちの職場となるコワーキングゾーン、富士ソフトオフィスのプライベートゾーンの3種を設けた。
 各ゾーンの壁には、県立大船渡高校美術部のアイデアをもとに、東京を拠点とするアーティスト集団「TokyoDex」のメンバーが手掛けた絵があしらわれている。各ゾーンの連絡通路として外にはウッドデッキを整備した。
 富士ソフトは社員2人を常駐させて業務を始めており、地元から4人を募集中。ギークハウスでは三陸町越喜来の杉下応急仮設住宅を借りてテレワーカーの受け入れ先を開いており、北村直樹代表は「東北での開設は初めて。海や山にふれ、例えるなら晴耕雨読のような生活ができる土地。何件か問い合わせもいただいている」と話す。
 実証事業は本年度限りだが、同市ではテレワークを「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の柱の一つと位置付けており、戸田市長は「仕事や交流創出に資するよう、期間終了後も継続させたい」と話している。