道化らにぎやか「見っさいな」、火伏せの奇習・水しぎ/世田米(動画あり)

▲ 一の会では町内外からの参加者らが個性的な道化姿に扮し、無火災を祈願=住田町世田米

 住田町世田米に伝わる火伏せの奇習「水しぎ」は24日、地区内各地で行われた。今年は継承活動を続ける愛宕地区青年団「一の会」(佐藤昌信会長)と「下町消防」(1分団1部・泉田健一部長、同4部・荻原洋正部長)がそろって展開し、両団体合わせて約80人が参加。参加者らは道化姿で一斗缶などを打ち鳴らしては「見っさいな、見っさいな」と歌い踊り、地域の防火と無病息災を願った。

 

一の会と下町消防 2団体そろって展開

 

 水しぎは世田米に約200年前から伝わる奇習で、毎年1月24日に挙行。世田米が宿場町として栄えていた昔、偶然ボヤを見つけた通りすがりのこじきが鍋釜をたたいて住民たちに知らせ、大火事を防いだのが始まりといわれている。語源は、「水注ぎ」「水祝儀」がなまったものという。

 戦後しばらく途絶えた時期があったが、昭和51年に一の会が復活。曙地区の消防団員らで構成する下町消防も伝承活動を続けている。例年、一の会は1月24日、下町消防は団員が集まりやすい日曜日に設定して実施。今年は24日が日曜日となったことから、2団体がそろって水しぎを繰り広げた。

 このうち、一の会の水しぎには町内外から50人余りが参加。愛宕公民館で化粧や着替えを済ませ、それぞれが道化姿に変身すると、昼ごろから2班に分かれて地域に繰り出した。

 参加者らは木の棒で一斗缶を打ち鳴らしながら、地域内の家々や商店など約350軒を巡回。「見っさいな、見っさいな」とはやし立てると「大黒舞」を歌い踊った。

 披露を終えると、地元の愛宕神社で魂入れをした防火の札を配り、この一年の無火災と住民らの健康を祈念した。終盤には二つの班が一緒になって世田米商店街を回り、夕暮れまでにぎやかな声を響かせていた。

地域内の福祉施設や商店などにも登場し、大黒舞を歌い踊った下町消防=すみた荘

地域内の福祉施設や商店などにも登場し、大黒舞を歌い踊った下町消防=すみた荘

 一方、下町消防の水しぎには、団員や1分団2、3部の有志ら約30人が参加。白塗りの化粧に着物やドレスなどを身に着け、奇抜な道化に扮すると、午前中から地域内の約250軒を回った。

 一行はガンガンガンと一斗缶や金属製のバケツを打ち鳴らしながら、各家に登場。威勢のいい声で「見っさいな、見っさいな」と声を上げ、「一に俵を踏んまえて、二でニッコリ笑って…」と「大黒舞」を歌い踊ると、防火祈願の札を配った。中にはアンコールを求められたところもあり、再度にぎやかな声を響かせては、地域住民らに元気も届けていた。