県が高田松原地区の砂浜再生に着手、試験施工へ「突堤」整備/陸前高田

▲ 大規模事業が同時並行的に進められている高田松原地区=陸前高田

 陸前高田市の高田松原で県が進めている高田地区海岸砂浜再生事業は、養浜の試験施工に向けた「突堤」整備に入った。試験施工の延長は約200㍍で、高田松原地区以外から確保した「購入砂」を基本とする方針。最大幅は50㍍で、砕石上に厚さが1㍍となるよう砂を敷く計画だ。今年夏には一部ではあるが砂浜が復元を果たす見込みとなっている。

 

今夏に200㍍〝復元〟の見込み

 

160204-1-1 砂浜再生 東日本大震災により、高田松原では奇跡の一本松を残してほとんどのマツが流されたほか、砂浜も地盤沈下と津波により、約9割が消失したとされる。震災前の砂浜は約2㌔にわたって広がり、マツに囲まれた遊歩道は市民らの憩いの場として愛されてきた。

 平成22年度の海水浴客数は約17万人。砂浜の幅は3060㍍で、平均すると50㍍。砂の粒度組成をみると中央粒径は0・26㍉前後で、前浜の勾配は1020分の1で安定していた。

 県がまとめた養浜基本計画では、直近の測量データがある平成15年頃の砂浜を回復目標としており、当時の砂浜幅や勾配、粒径を目指す。高田松原の砂浜は、気仙川から流出した土砂によって形成。しかし、砂が自然と堆積するまでは、数百年を要すると推定される。このため、養浜工事による砂浜の再生を目指してきた。

 昨年開かれた砂浜回復に向けた技術的検討を進める高田地区海岸養浜技術検討委員会(委員長・田中仁東北大学大学院工学研究科教授、6人)の場で、砂浜回復方法として養浜材料は高田松原地区外からの「購入砂を基本とする」方針を確認している。

 砂浜景観の復元を図る第1工区(約400㍍、米崎町側)と第3工区(約650㍍、川原川河口部)に挟まれた第2工区(約700㍍)で、海水浴場としての機能を確保。各工区境界部の砂浜には仕切りの役割を果たし、砂の流出を防ぐ「突堤」も設ける。

 試験施工は、第2工区と第3工区にまたがる200㍍で行う。両端と、中央部の計3カ所に石による突堤を設ける計画。中央部に位置する突堤の長さは84㍍で、本設設置。両端部は試験用の仮設で、川原川河口部側は49㍍、米崎町側は77㍍となる。

 ほぼ完成している海面高3㍍の第一線堤に沿い、第2工区内では幅50㍍の砂浜形成を、第1工区内では30㍍を目指す。5月から砕石などを入れ、6月から1㍍の厚さになるよう砂を投じる計画。全体延長からみれば一部だが、8月には砂浜の風景が戻る。

 その後、波打ち際の測量や砂と砕石の混ざり具合を把握する底質調査、突堤部周辺の調査などを予定。定点カメラによる観測も行う。平成29年2月ごろに計画している第4回技術検討委員会を経て本格施工に入り、事業完了は30年度を目指している。

 高田松原地区で県は、防潮堤や気仙川水門などの整備を展開している。第一線堤と、津波被害を低減を目的とした海面高12・5㍍の第二線堤間には松林の再生を計画しており、基盤材の搬入が進む。同地区ではこのほかにも復興祈念公園整備や道の駅機能の復旧など、国、県、市による大規模整備が控えている。

 県沿岸広域振興局土木部大船渡土木センター復興まちづくり課の島田耕司課長は「高田松原はこれまでも白砂青松で観光客が多く訪れる場所であり、にぎわいの創出や元の風景を取り戻せるよう、整備を頑張りたい」と力を込める。