データで浮かび上がる健康対策──重症化予防がカギに/住田町国保

▲ データヘルス計画案について議論が行われた国保運営協=住田町

健診受診率の向上も1人あたり医療費県内最高額

 

 住田町は平成28、29年度の2カ年を期間とする国民健康保険データヘルス計画をまとめた。診療報酬明細書(レセプト)や各種統計資料の分析を行い、浮かび上がった健康課題に取り組む指針を定めたもの。同町は25、26年度と被保険者1人あたりの医療費が県内最高となっている中、各種疾患の重症化を防ぐ施策を展開するほか、健診受診率向上にも力を入れる。

 データヘルス計画は、医療費データや健診情報等に基づき、効率的・効果的な保健事業を実践するもの。平成26年度以降、国保を運営する各保険者に対して計画策定が努力義務化されている。
 同町の26年度における人口総数は6142人で、このうち被保険者数は1591人(加入率25・9%)。高齢化率は39・0%で、被保険者の平均年齢は57・1歳となっている。
 全国の高齢化率は23・2%。岩手県の27・3%、同規模自治体の31・6%と比べても、同町の高齢化率の高さが際立つ。被保険者の平均年齢は国50・3歳、岩手県53・5歳、同規模自治体52・1歳となっており、同町平均が大きく上回る。国保被保険者の年齢構成をみると、65~74歳が4割以上を占める。
 同町の医療状況は外来患者数が少なく、重症化に伴い入院患者数が多い傾向。被保険者一人あたりにおける医療費は月平均で3万597円と県内最高額。国平均は2万3292円、県平均は2万4638円、同規模町村は2万5108円で、2割以上高い。25年度医療費も最高額だった。
 一般的に、高齢になれば医療費がかさむため、被保険者の平均年齢が県平均などを大きく上回っている現状が大きな要因とされる。しかし、医療費は国保財政や市民生活、介護分野にも密接にかかわり、地域課題の一つと言える。
 入院の件数は全体の4・9%にとどまる一方、その費用額は全体の48・8%を占める。人口1000人当たりの入院患者数も年々増加。重症化を予防することで入院を減らし、医療費の抑制につなげる重要性が浮かび上がる。
 特定健診の平成26年度受診率は42・2%。国平均(33・2%)を上回るが、県平均(43・0%)は下回る。未受診者のうち約4割がなにも治療を受けておらず、健康状態をつかめない状況という。
 計画では医療費が高額となる要因で、さらに要介護の原因疾患となっている虚血性心疾患や脳血管疾患、糖尿病性腎症の各重症化予防を重点的に取り組むとしている。
 中長期的には各疾患の患者数を減少させるとともに、その基礎疾患である糖尿病、高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症の新規患者数を同規模町村に近づけることが目標。また、特定健診の受診者を増やし、早期介入によって生活習慣病予防につなげ、入院費用の割合を同規模町村並みの43・5%に近づける。
 短期的な目標には▽特定健診未受診者への受診勧奨▽医療機関要受診者への受診勧奨▽特定保健指導実施率の向上▽非肥満ハイリスク者への保健指導▽「健康と適正飲酒」「健康と喫煙」の健康教育──を掲げる。
 このうち、特定健診未受診者への受診勧奨に関しては、過去3年間の国保加入者で一度も健診を受けておらず、医療機関で治療を受けてない人を対象に、通知や訪問で受診を勧める。勧奨者に対する受診割合は平成29年度に50%としている。
 医療機関要受診者への働きかけも同様に行う。26年度の未受診率は9・3%となっているが、29年度目標は4%としている。
 計画案は、30日に行われた町国民健康保険運営協議会(千田明夫会長、委員9人)で承認された。議論の中で委員からは糖尿病対策の徹底や住民向けに行っている医療費通知資料のさらなる活用を求める声に加え、同じ疾患で複数の医療機関にかかっている「ダブル受診」の実態を指摘する発言などが寄せられた。
 計画は町広報やホームページに掲載する予定。実施状況の取りまとめも行い、評価や見直しに活用する。