経営改革 成果徐々に、三陸木材高次加工とさんりくランバー/住田

▲ 現在は整然としている三木の工場内。かつては加工品が多く積まれフォークリフト走行などにも苦労していたという=世田米

 住田町世田米の木工加工団地内に構える三陸木材高次加工協同組合(中川信夫理事長、三木)と、協同組合さんりくランバー(同代表理事、ランバー)は昨年10月から経営体制の改革を進め、今年度に入り単月黒字の実績を残すなど利益確保への取り組み成果が徐々に出始めている。両組合は町から約7億9000万円の公金融資を受け、26年度から年額約3100万円を償還する予定となっていたが、2期連続の赤字決算で満額の償還ができず厳しい経営状況が続く。町政課題から、町の基幹産業をけん引する事業体に生まれ変わることができるか。その行方は多方面から注目を集める。

 

新体制下で単月黒字計上も

 

 三木は主に防腐加工などを施した構造用集成材を製造しているほか、木工団地内の各事業所にエネルギーを供給するボイラーなども稼働。現在の従業員数は中国人研修生を含めて45人。ランバーは各森林などから運ばれた丸太を集成材用ひき板(ラミナ)に製材、乾燥して三木などに供給し、従業員数は研修生を含めて9人。
 両組合は同19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町へ償還する計画だったが、同年度は返済できなかった。
 27年度の決算状況は、三木は売上高が13億4494万円、純損失は6229万円。ランバーの売上高は2億2255万円、純損失は4047万円。次期繰越損失金は三木が7億8918万円、ランバーは4億1473万円に増加した。
 損失金計上は2期連続。前年度は資金繰りをはじめ経営的に困難な局面に見舞われたといい、同じ団地内に工場を構えるけせんプレカット協同組合から全面的な協力を受けた。
 状況打破に向け、昨年10月からは同組合の泉田十太郎専務を支配人として招き、経営体制改革に着手。夜間も含めた複数シフトから、昼間だけの1シフトと残業対応とし、稼働時間中の生産性を向上させるなど職員一丸となった刷新を進めたほか、県による経営支援アドバイザーからの助言も受けてきた。
 「まずは工場内の整理、整頓、清掃から手をつけた」と泉田氏。関係者によると、これまでは「つくるのに間に合わない」との声が出るなど受注対応に苦労する場面もあったといい、効率的に対応できる生産体制構築を図ってきた。
 昨秋以降、製造原価にかかる経費節減が経営体制に好循環をもたらし、従業員一人当たりの生産性が向上。資金繰りも維持され、少人数体制での運営体制が定着しつつある。ただ、過去の債務をはじめ財務は依然厳しい面もあり、新体制から1年を迎える10月ごろまでは予断を許さない状況という。
 今後は「アメーバ経営」で知られる京セラグループの指導を受け、ランバー単体、三木のボイラー部門、加工、防腐の各セクションごとで利益確保を意識した取り組みも進める。稼働時間当たりの付加価値を重視し、従業員が改善策を共有してさらなるコスト削減などを図ることにしている。
 4月以降、安定運営に向けた毎月の売上高目標を三木は1億2000万円、ランバーは2000万円と設定。三木は4月は赤字だったが、5月と6月と連続で黒字に。ランバーも4月は赤字で5月は黒字、6月は赤字だったという。
 泉田氏は「まだスタートラインに立ったとは思っていない。この状態を秋まで持続させていきたい。両組合とも職員の業務に臨む姿勢は素晴らしいものがあり、私は利益を確保でき、今後町に計画通りの償還ができるようになると思っている」と話す。
 「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げる住田町。木工も基幹産業を担う一方で、これまで町が多額の公金を投入してきた三木、ランバーの経営状況や償還の行方は、町政課題の一つとなっている。町議会議員の一人は「この問題が解決しなければ、今後町が新たに展開していく事業にも影響する」と語る。
 6月定例会では、一般質問に立った多くの議員が追及。多田欣一町長は「一定の経営計画ができた時点で、返済について私も含め、議員と両組合の理事、できれば出資者も含めて一緒に議論する場を」などと答弁しており、今後設けられる議論の場でどのような方向性が浮かび上がるか注目される。