〝真の目標達成〟へ注文続々、住田町総合計画・人口ビジョン・総合戦略推進委

▲ 古き良き雰囲気が広がる「まち家世田米駅」で開かれた推進委。この施設の有効活用も推進策の一つとなっている=世田米

 住田町による本年度初の総合計画・人口ビジョン・総合戦略推進委員会(委員長・大杉覚首都大学東京大学院教授、委員16人)は22日夜、世田米の「まち家世田米駅」で開かれた。先行型として前年度に実施した8事業の評価検証や、6月末時点での進捗状況などを確認。総合戦略では所得向上や人口減少対策として各種数値目標が掲げられている中、委員は多岐にわたる登載事業の各実績が目標数値達成にどうつながったかを重視すべきなど、今後の方向性や評価検証の充実に向けて多様な意見を寄せた。

 

評価検証の充実カギに

 

 国のまち・ひと・しごと創生法に基づき、町は平成27年度から5カ年の人口ビジョンと総合戦略、さらに28年度から4年間にわたる総合計画を策定。人口ビジョンでは町の将来展望を、総合戦略ではその政策目標や重要施策を掲げ、総合計画は各重要施策の部門別計画に位置づけている。
 策定時から携わる委員は有識者や町民代表、産業、金融各分野から選出され、この日は13人が出席。冒頭、大杉委員長は「策定から実践に向け、進ちょく状況の管理を」とあいさつした。
 協議で町側は、27年度の総合戦略事業(先行型)を説明。国からの交付金を生かし▽戦略策定▽結婚対策推進▽国際理解教育推進▽移住促進▽町中心地域活性化▽食いくプロジェクト推進▽木いくプロジェクト推進▽雇用促進──の8事業を展開した。
 総合戦略では町民所得を平成25年の235万円から10%増の255万円とする数値目標を掲げる中、新規展開した「食いく」では、地域資源を活用した産業創出や就業確保を目指した。地元特産の赤カブソース商品化を見据えて3種類を開発し、市場アンケートなどを実施した。
 「木いく」も町のイメージアップや雇用拡大、所得向上に向けた取り組み。前年度は試作3回を経て学校用机・いすの最終設計図を作成したほか、新生児用木製品として試作品7品を製作した。
 同じく所得対策として盛り込んだ中心地域活性化事業では住民交流拠点施設として古民家や蔵を生かした「まち家世田米駅」を整備。まち歩きガイドの台本制作や景観まちづくり講演会も行った。
 食いくの新規商品数、木いく事業の試作品数の実績はいずれも、重要業績評価指標(KPI)に掲げる計画値を上回った。一方で、活性化事業のKPIではイベント交流人口を約1500人としていたが、114人にとどまった。 
 本年度から着手した事業のうち「各地区公民館機能の充実」では、世田米、大股、下有住、上有住、五葉の各地区に公民館主事兼集落支援員が着任。常駐により、住民交流の場づくりにつながったなどの声が寄せられている。
 総合戦略では人口対策の数値目標として「児童数1学年40人」を掲げ、その達成に向けた結婚数や出生数、移住者の増加を描く。町民所得に関しても木材・木製品や食品製造、農林業、商工業などの売上高向上をKPIに盛り込んでいる。
 結婚に関して委員からは「以前から取り組んでいるのであれば、今までの状況を示したうえで、なぜ改善されてこないのかなども明らかにすべき」との指摘も。戦略全体に関しては「各事業の実績だけでなく、目標数値の達成にどうつながったかもしっかり出してほしい」といった注文も出た。
 各種施策実現にはマンパワーが重要とし、町担当課の枠を超えた対応の必要性にふれた発言も。会議終了後、大杉委員長は「事業所や住民も参画し、一緒になった取り組みが重要」と話していた。
 本年度は町民向けに、総合戦略の評価に関する住民アンケートを計画。推進委員会の会合は3回設け、事業成果の検証などを行うことにしている。