声で選手らを鼓舞、大和田さん(陸前高田市)が国体野球でアナウンスへ
平成28年9月10日付 7面

希望郷いわて国体の開幕が来月に迫った。県内6会場で実施される正式競技・成年男子軟式野球においては、陸前高田市の地域包括支援センターで働く大和田明美さん(40)=米崎町=がアナウンス係として〝出場〟する。気仙からは唯一の同係選出となり、大和田さんは第2会場の野田村ライジング・サン・スタジアムで、10月2日、3日の計3試合を担当。「全国から出場する選手の皆さんに失礼がないよう、しっかり務めたい」と意気込む。
気仙からただ1人選出
大和田さんが野球アナウンスに興味を持ったのは、現在高校生の次男・淳博君が野球スポーツ少年団に所属していたことがきっかけだった。
「1番、バッター○○君」
こうしたアナウンスは市内大会ではつくことがなく、選手たちは県大会まで進まないと試合中に名前を呼ばれない。だが「アナウンスがあるだけで、子どもも親もやる気になる。市内でもできないかなと思ったんです」と大和田さん。経験はなかったものの、審判員だった知人のつてを頼り、平成22年春に学童野球の試合で〝デビュー〟を果たした。
その翌年に東日本大震災を迎え、「2度目」の機会がないまま時は過ぎてしまったが、淳博君が中学校へ入学した25年4月、念願のアナウンス講習を受講。その勢いで同市野球協会(坂井一晃会長)に「5月の大会で使ってほしい」と頼んだ。
「完全に〝押しかけ〟ました。当時はまだ放送設備もないから、ハンドマイクを使って…」
だが同協会は当初から「国体でもアナウンスできるよう頑張って」と背中を押してくれたといい、大和田さんも市内の各種大会で〝腕〟を磨いた。現在は県野球連盟にも公式登録し県でも活躍する。一方、大事にしているのは地元の児童生徒の試合。ゲームが重なった時は、迷わず学童野球を優先する。
陸前高田の野球少年たちから「あけちゃん」と慕われる大和田さん。「今度アナウンスしてくれるんですか」と聞いてくる子や、遠征から帰ってきて「あけちゃんの声じゃないとやっぱりダメだ」と言ってくれる子も。子どもたちの話になると「かわいくてかわいくて」と大和田さんの目じりは下がりっぱなしになる。
「あけちゃんに名前を呼んでもらうと、何でもできる気がした」
現・高田高校2年の村上諒平君が、高田東中学校野球部を引退する際、慰労会の席でこう言ってくれた。村上君は「だから後輩たちのためにも、これからもアナウンスをしてほしい」と続けた。
野球する子らのこうした言葉が、大和田さんの支え。実績を買われ国体への参加が決まった時も、生徒たちがわがことのように喜んでくれた。
同市野球協会の金野丈雄副会長(66)は今回の選出について「選ばれるべくして選ばれた人。彼女のアナウンスが入るのと入らないとでは気持ちの引き締まり方が違う」といい、「国体でも気負わず、普段の力を発揮してもらえれば間違いない」と激励した。
「46年ぶりの岩手国体開催という貴重な機会。選手の皆さんも耳の肥えた方ばかりと思うので、苗字のイントネーションなどにも気を付け、役割を果たしたい」と大和田さん。「野球協会の皆さんが受け入れてくださり、こうした環境を与えてもらったからこその選出」と周囲への感謝を胸に準備を整えている。