地域医療維持へ模索、経営体制や施設など課題に/住田町

▲ 地域住民の医療を長年支えてきた医院の閉院に伴い、早期の医師確保や診療体制充実が求められている=世田米

 住田町は、本年度に入り町内の民間医院1施設が閉院したことを受け、医療体制維持に向けた取り組みを進めている。これまで町内では、県立大船渡病院附属住田地域診療センターを核とし、個人が経営する医科診療所、歯科診療所各2施設で担ってきたが、世田米の上代(わんだい)医院が閉院して2カ月余りが経過。町は住民の安心・安全確保の観点から関係機関に理解や協力を求める中、現時点では経営体制や施設面などが課題に上がる。住民側では、同医院の近隣に構える診療センターの充実を求める声も根強い。

 

民間医院減に伴い、診療セ充実の声も

 

 この問題に関しては8、9日に行われた町議会9月定例会一般質問で複数の議員が取り上げ、当局と論戦。12日から始まった決算審査特別委員会でも話題に上った。単に施設に出向いて受診するだけでなく、地域における医師の役割は学校医や産業医、予防接種など多岐にわたり、住民も今後の動向に関心を寄せる。
 当局答弁などによると、上代医院は医師の健康上の理由で6月末に閉院。4月の段階で、休診となっていた。
 町は総合計画の部門別計画で地域医療体制維持を掲げる。民間施設の動きではあるが、数少ない町内の医療資源がなくなることは町民に大きな影響を与えるとの観点で、対策を進める。
 多田欣一町長は答弁で「町の地域医療体制の中で一つでもその機能を失うことは、町民の安全な暮らしを守るまちづくりや、地域包括ケアシステムの構築に向けて大変な痛手。医科診療所の機能が失われないよう努力したい」と述べ、力を込めた。
 町は、町内の開業医、気仙地区内の医療関係者と相談・協議を重ね、同じ場所で医院運営を担う医師確保に向けて調整。現段階では医師確保への見通しはある半面、開業の条件整備などで関係者と相談を進めている。
 課題の一つは、経営体制。医師が赴任する環境を早期に整えるためには既存の法人が運営母体となる形が望ましいといい、気仙内外の医院を持つ法人や社会福祉法人などと交渉を進めてきた。
 また、現在閉院している施設の耐震性や、新たな医療機器設備への対応能力も懸念材料。上代医院関係者は年明けまでに、解体したい意向を示しているという。
 町は直営の診療所運営は難しいとの姿勢だが、施設改修などに対する支援の必要性を示唆。ただ、気仙全体においても医療資源は十分とは言えない中、議会論戦では〝診療再開〟に向けた具体的な時期の明言はなかった。
 この行方とは別に、現体制下における対応にも関心が集まる。閉院が判明した時点で、町は町内の開業医や気仙医師会長、県立大船渡病院長らを訪問。閉院の経緯と今後の説明をしたうえで、後継医師につながる情報提供や学校医の対応、出張診療などを要請した。住田地域診療センターの外来患者受け入れ充実にも理解を求めた。
 かかりつけ医が失われるとの懸念に対し町当局は「すぐ近くに診療センターがあることで危機的な状況ではない。医師や診察日が変わるといった負担はあるかもしれないが、長期化や重症化を招くような受診抑制、負担増にはならないのでは」との見方を示す。
 一方で議会論戦では、診療センターの患者数が増加傾向にあることが明らかになった。町議の一人は「医院を担う医師確保に加え、センター充実の必要性も高まっている」と指摘する。
 町は、先月24日に行った対県要望の場で、診療センターの医療体制強化・充実を強調。入院ベッド確保や外来、訪問診療の各充実、初期救急医療体制の確保に加え、本年度は新たに訪問介護の実施と充実を求めている。