奥野さんが「ありがとうライブ」、仮設撤去の猪川小で/大船渡(別写真あり)

▲ 児童らと歌と笑顔のハーモニーを奏でた奥野さん=猪川小

 震災後、気仙の仮設住宅などで支援ライブを展開している大阪府の歌手・奥野ひかるさんは14日、仮設住宅が撤去された大船渡市の猪川小学校(佐々木修正校長、児童319人)で〝ありがとうライブ〟を行った。校庭を使えない日が長く続いた中、その元気な姿で被災者を支えた児童らへの思いを歌に込め、感謝の気持ちを伝えた。

 

児童らへ感謝伝える

 

 奥野さんは、平成24年から気仙で仮設慰問ライブを展開。昨年5月から約1年間は、来訪のたびに盛町の旧沢川仮設に住み込んで活動を行うなど、「歌手と観客」という垣根のないステージで、被災者の心に寄り添い続けている。
 いつしか〝仮設の歌姫〟と呼ばれファンに慕われてきた奥野さんだが、6月に行った同仮設での累計700回目のライブ「さようなら・ありがとうライブ」を境に、仮設以外でも歌うことを決意。
 「仮設以外の被災者のもとにも来てほしい」という各方面からの熱いファンコールがあったことと、奥野さん自身の「校庭を使えずにいた被災地の子どもたちに感謝を」という思いが、〝復興の歌姫〟という新たなステージへ足を向けさせた。
 大船渡市内の仮設住宅は7月から撤去が本格的に始まり、猪川小の校庭にあった轆轤石仮設も取り払われた。奥野さんは同仮設でもライブを行ったことがあり、住民からの「仮設に住んでいる間、子どもたちの元気な声があったから頑張れた」という声を伝えようと、同校でのライブを申し出た。
 この日、会場の体育館には全校児童や教職員、地域住民らが来場。子どもたちから名前を呼ばれると、きらびやかな赤い衣装を身にまとった奥野さんが登場し、東北復興応援歌『がんばっ節』でステージを幕開けした。
 奥野さんは客席に何度も足を運び、飾りのない笑顔と明るい歌声で〝お友達〟のように児童らと交流。奥野さんの熱気にふれ気分を高揚させた児童らは、席を立って合いの手をいれたり、歌っている奥野さんのそばまで駆け寄って踊るなど、自由な音楽の場を心から楽しんだ様子だった。
 終わりに、同校のボランティア委員会の児童らが、奥野さんへ感謝状を贈呈。代表児童の「広い校庭で遊んだりできないことは残念でしたが、被災したみなさんのお役に立ててよかったと思っている」「人の役に立つ活動をしようと努力してきた奥野さんの活動は、私たちの目標です」という言葉に、奥野さんも「今までいただいた賞状の中で一番うれしい」と感謝を伝えた。
 奥野さんは「今回のライブで、子どもたちはみんなすごいエネルギーを持っているというのがわかった。震災があったがためにそれを発散させる場所が制限され、きっと子どもたちは無意識にストレスをため込んでいた」と、ライブで見せた子どもたちの無邪気な笑顔の裏に考えを巡らせた。
 また、「仮設があった時期、子どもたちの存在は住民の方々の勇気になっていた。震災から5年半が経過した今だから伝えられることを、今後もライブを通して伝えていけたら」と、意気込みを語っていた。
 同日は、けせんコープの関係者も同校を訪れ、ライブを楽しんだ子どもたちへ菓子を配布した。
 仮設が撤去された同校の校庭の整備は11月上旬ごろまで行われ、工事が終わり次第使用を再開する予定。