独特の心象表現に挑戦、12月に「詩劇 まな子と瞳」/劇団OPA

▲ 稽古を重ねる劇団OPAとアイムのメンバー=三陸町

 大船渡市三陸町越喜来の三陸公民館で12月11日(日)に、宮城県仙台市に拠点を置く劇団I,M(アイム、三木弘和代表)による公演「詩劇 まな子と瞳」が行われる。津波で引き裂かれた友人同士の女性2人を中心に描いた創作劇で、東日本大震災を機に結成された気仙両市の小中高生らによる劇団OPA(大船渡パフォーミングアーツ、今野晋司代表)が出演する。大津波で被災し、再生を遂げた同館を舞台に生きる希望と再生を表現しようと、復興を担う子どもたちが定期的に集まり、独特の心象表現を追い求めている。

 

“被災の魂”再生の三陸で

 

 平成8年設立のアイムは、これまで日本各地でミュージカルを上演。近年は開催地で参加者を募り、指導にあたる「地域創造市民参加型」の舞台づくりも精力的に行ってきた。
 OPAは、東日本大震災直後に立根町出身の劇団員から創作ダンス指導を受けた子どもたちが避難所を慰問し、元気を届けた「下欠復興有志の会」が前身。一昨年2月にOPAとして発足し、翌年3月に初めて市内公演を行った。その後もアイムとは共演やワークショップを通じて交流を深めている。
 「詩劇 まな子と瞳」は、アイム劇団立ち上げ20周年を飾る作品。まな子と瞳は友人同士で、まな子が誘って川遊びに出かけたときに津波が襲い、瞳が行方不明になる。まな子はショックで記憶を失い、仕事でもミスを重ねる。一方、瞳は犠牲になった自分に気づかぬまま、まな子を励まそうとする──。
 立場は違うが、津波による死を受け入れられない2人。さまざまな思いに取り巻かれながらも区切りを見いだし、前へと歩みだそうと模索する。震災に直面した人々の心に光を当てるとともに、身体芸術を追求した挑戦的な舞台としても注目を浴び、今年仙台や札幌で行われた公演ではいずれも成功を収めた。
 大船渡公演でOPAメンバーが担うのは「コロス」と呼ばれる役回り。全身を使って奇怪な動きを重ね、目に見えない力を表現する。前向きな笑顔や躍動ぶりを発信するこれまでの活動とは全く異なる世界。新境地への挑戦は、今月から本格化した。
 17日に三陸公民館で行われた稽古には、気仙両市の小中高生10人余りが参加。アイムの出演メンバーから直接指導を受けながら、舞台上で独特の動きを繰り返した。
 バランスを崩しながら動き回ったあと、音楽に合わせて静止して顔の向きを合わせる。目線を合わせず、互いに身体をすり寄せるように揺らし続ける――。子どもたちは戸惑いの表情を見せつつも、試行錯誤しながら演じ続けた。
 三木代表は「ありえないことがきちっと行われていることで、舞台上から怖さを与える。君たちは陰の主役。抽象的で社会的なテーマだけど、成長につながる」と、期待を込めながら声をかけた。
 大船渡中3年の久保田瑠奈さん(14)は自ら仙台での公演に出向き、アイムメンバーとともに舞台に立つなど意欲的に参加。「アイムがつくるものは、人々の心を動かすことができる。多くの皆さんにこの作品を通じて、何かを感じてもらいたい」と語る。
 大津波に襲われても建物として残り、修復された三陸公民館での披露は、東日本大震災の月命日に行われる。住民一人ひとりがさまざまな思いを寄せる日に、さまよいながらも希望を追い求める魂を描く。今野代表(56)は「被災し、まだ心の整理がついていない方も多いと思う。未来がひらけるきっかけとなれば」と話す。
 12月11日は、午後2時開演を予定。入場料などは調整中。稽古は月数回土曜日に三陸公民館で開く予定で、誰でも見学できる。問い合わせは今野代表(℡080・8423・4884)へ。