秋色の風景バックに走行、ツール・ド・三陸に全国から950人/気仙両市(別写真あり)

▲ 稲刈り前の田もまだ多く、参加者は金色に輝く田園風景の中を駆け抜けた=小友町

 「ツール・ド・三陸サイクリングチャレンジ2016」(ツール・ド・三陸2016実行委主催)は25日、陸前高田市高田町の栃ヶ沢公園を起点に行われた。同イベントは今年で5年目を迎えるが、9月に開催されたのは初回大会に続き2度目。好天に恵まれた中、参加者は稲刈り前の黄金(こがね)色に包まれた水田を眺めながら疾走し、海沿いの雄大な景色だけでなく、稲穂やコスモスを揺らす初秋の風も満喫した。

 

 午前7時から栃ヶ沢公園で開かれた開会式では、イベント実行委員会名誉会長である戸羽太陸前高田市長が、全国から訪れたおよそ950人の出場者を歓迎。「こちらの現状を見ていただくと同時に、皆さんがお住まいの地域にどんな災害が起こりうるのか、どうやって命を守るのかといったことにも思いを巡らせていただきたい」と呼びかけた。
 この日はリオデジャネイロパラリンピックにも出場した自転車競技日本代表の石井雅史さんや、プロロードレーサーの別府史之さん、ハンドバイク元世界チャンピオンであるグレッグ・ホッケンスミスさんら、一流アスリートたちもゲストに加わり、初級から上級まで五つのコースに分かれて気仙両市を駆け抜けた。
 走行距離25・2㌔のファミリーコース以外は大船渡市の碁石海岸まで足を延ばし、陸前高田市の広田半島、アップルロード、高田町の市街地などを走行。新設された「剛脚もののけコース」では、本格志向のヒルクライマーたちが雨上がりの氷上林道を走り、濡れた落ち葉や萩、すすき、雲海が次第に晴れていく様子なども目にした。
 各地の沿道では、通り過ぎるサイクリストたちを待ちかまえ、声援を送る地域住民の姿が。近所の人と一緒に「ありがとう」「気を付けて」などと声をかけ続けた小友町矢の浦の佐藤立さん(77)らは「災害のあとわれわれを応援していただき、本当に感謝している。こうすることも恩返し」といい、まわりの女性たちも「いろんなところから来てくれる人を、ここで見送るのが毎年楽しみ」と笑顔を見せた。
 また、下矢作コミセンや碁石海岸、広田漁港などの各エイドステーションでは、地元の女性らが食べ物や飲み物を用意してお出迎え。参加者も温かい笑顔に見送られて再度出発し、それぞれのペースでゴールを目指した。
 午後1時過ぎには、元F1レーサーの片山右京さんらと共に、最終グループが同公園へゴール。完走できたことを喜び合い、涙する人も見られ、迎えた人たちも惜しみなく拍手を送った。
 静岡県に住む高松史朗さん(40)は今年で4回目の参加。今回は仙台在住の同僚たちを誘って一緒に出場した。初参加時は初心者で「ふがいない思いをした」というが、2回、3回と回数を重ねるにつれて醍醐味を感じられるように。「ようやく景色を味わう余裕ができ、自転車が楽しくなってきた。碁石海岸や広田湾の眺めが好きです」と話し、仲間たちも「天気が良くて、秋らしい風景が最高でした」と笑顔で完走証を掲げた。
 また、九州の震災を受け、実行委は大会公式ジャージの売り上げから1着につき1000円を義援金として寄付。合わせて266着を販売し、26万6000円が熊本県へ送金されることになった。