相次ぐ台風乗り越え、下有住・松日橋の修復作業/住田(別写真あり)

▲ 地域住民らが力を合わせて進めた松日橋の設置作業=下有住

 住田町下有住高瀬地内の気仙川で25日、地域住民による松日橋の修復作業が行われた。木製の松日橋は大雨を想定した「流れ橋」となっているが、先月30日に襲った台風10号に伴う増水で護岸部分が崩壊したため、これまでよりも大規模な修復に。地域住民は声をかけ合いながら作業を進め、古里の風景を復活させた。

 

声かけ合い つなぐ伝統

 

大雨の影響を乗り越え、古里らしさを感じさせる風景が復活=同

大雨の影響を乗り越え、古里らしさを感じさせる風景が復活=同

 松日橋は、中山と松日の両地域を結ぶ。川をはさんで住居と田畑を持っている人が多く、古くから生活に密着した利用が続き、橋と周囲ののどかな田園風景は見る人の目をなごませる。
 橋の長さは約40㍍で、橋板の材料には町産のスギ材を活用。橋脚はこれまでクルミ、クリ材が用いられてきた。
 橋脚は「叉股(ざまざ)」と呼ばれる太い枝が二股に分かれた部分を使い、角度を調整しながら組み合わせた上に橋板を乗せる。増水時はワイヤーロープでつながれた橋板が浮き、橋脚は流れに逆らわない形で倒れ、橋の形が失われる仕組みとなっている。
 気仙川流域で古くからの形で残っている一本橋は、松日橋だけとされる。両岸を結ぶという役割にとどまらず、下有住の歴史・文化遺産としても貴重だ。
 橋が流されたのは、台風7号による大雨の影響を受けた先月17日。加えて、先月30日に気仙を直撃した台風10号でも増水し、護岸部分が崩落した。
 流出のたびに対応してきたが、今回は国道340号側のたもと部分も整備し直すなど、大規模な修繕を強いられた。今回の橋の設置作業には、近隣の住民ら10人余りが参加した。
 川の中に入って7カ所に橋脚を立てたあと、3枚の長い木板を設置。設計図などはなく、住民の勘と経験に基づく手作業で進められた。流水の中に身を置き、大きな声をかけ合いながら木板などを運ぶ光景は、国道を通りかかったドライバーらの関心を呼んだ。
 朝方から昼にかけて設置が行われ、午後には昔ながらの風景が復活。高瀬地内在住の菊池保さん(86)は「年に3回くらいはやる作業だから、若い人たちに頑張ってもらわないと、と思って川には入らず見守った。渡った先に耕地がある人もいるから、この橋がないわけにはいかない。技を継いでいかないと」と話していた。