魅力、所得向上見据え、観光プラットフォームが始動/住田町

▲ 初回は菊池氏(写真奥)が遠野での取り組み事例を紹介しながらアドバイス=住田町役場

 住田町観光協会(泉田静夫会長)による第1回住田町観光プラットフォームは26日夜、役場町民ホールで開かれた。観光振興による町の魅力向上や所得向上を見据え、関係者が集まり現状課題や今後の方向性を探る場で、本年度は全5回開催する予定。受入規模や2次交通の不便さ、知名度の低さといった課題を抱える中、生活観光の推進や既存施設活用にどのような方向性を見いだして実行につなげるか、取り組みの行方が注目される。

 

〝普段〟を資源基盤に

 

 同協会としては初の試みで、観光振興に向けた住田の魅力向上や所得向上につなげるための情報交換や検討の場として設置。住田町の観光ビジョンを観光に携わる関係者で一緒につくり、平成29年度以降に具体的な行動を進める流れを描く。
 この日は町内の観光関連施設を運営する関係者や、民泊などを通じて各種交流ツアーを受け入れている住民ら約20人が出席。前半は協会側から町内における観光資源や都市農村活動の実績、現状の問題点などが示された。
 町内には滝観洞や種山ヶ原、釣りを楽しめる気仙川、登山を満喫できる五葉山など自然を生かした観光資源がある。本年度に入り、世田米商店街では古民家や蔵を改修した住民交流拠点施設「まち家世田米駅」が完成し、関心を集める。
 観光協会による都市農村交流の取り組みをみると、教育旅行や大学研修、民泊、各種交流企画を通じて25、26年度は延べ1000人を突破。しかし、27年度は500人を割った。
 問題点として、市場需要に合わない現状を指摘。宿や民泊体験、食事場所の受入規模に加え、東日本大震災被災地や世界文化遺産登録を果たした平泉など広域観光で誘致する観光ルート上に乗りにくい地理環境にあるという。
 また、最寄りの新幹線駅からのアクセスが不便で、公共交通による移動手段も限定的。住田町そのものや、町内観光スポットの知名度の低さも課題となっている。
 前年度に町が定めた町総合計画・人口ビジョン・総合戦略では、観光施策の目標値として交流人口を26年の9万7000人余りから31年には15万人に伸ばす方向性を掲げる。実現に向け、中心地域の活性化や産業学習体験観光の確立、観光産業による雇用創出などを見据える。
 引き続き、トータルコーディネーターを務める認定NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク=遠野市=の菊池新一会長が事例紹介。菊池氏は住田町に親戚が多く、同町と連携して民泊の取り組みを進めてきた実績を持つ。
 この日は20年ほど前から10年間にわたり温泉地である大分県・湯布院に住み、観光事業などに携わった経験を持つ㈲寺川ムラまち研究所=同=の寺川重俊代表も同席した。
 菊池氏は遠野でのグリーン・ツーリズムや参加農家140戸を誇る農家民泊の取り組みにふれたほか、全国的には「インバウンド」として外国人旅行者が増加している動きに言及。「外国人を農家に連れて行くと、きれいに苗が並ぶ田んぼや整然と積まれたまきなど、農村の暮らしに『アメージング(驚く)』となる」と語った。
 そのうえで「田んぼの畦道を歩いて農村風景を楽しみ、そこで育ったものを食べる。農家の暮らしそのものが観光資源になる」「ここに出席しているみなさんに会いに行きたくなる観光を」とアドバイス。寺川氏も湯布院での「生活観光」をキーワードとした動きにふれ、住民の息づかいが感じられる滞在の魅力を挙げた。
 次回は10月25日(火)に開き、出席者が意見を出し合うワークショップ形式を予定。住田町に暮らす住民として誇りたい地域の魅力やその活用のあり方などを探る。11月の第3回、1月の第4回もワークショップを行い、来年2月の最終回で次年度に向けた具体的な取り組みや今後の活動などについて意識共有を図る。
 泉田会長は「既存の観光施設の活用も含め、収入が上がり、心が豊かになる形になっていけば。最終的には、人と人による心のふれあいが大事になってくると感じている」と話していた。