“障壁”のないまちへ、陸前高田市が推進フォーラム(動画、別写真あり)

▲ 田﨑さん㊨らに「陸前高田市ノーマライゼーション大使」の委嘱状が手渡された=高田町

 陸前高田市が主催する「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり推進フォーラム」は4日、同市高田町の市コミュニティホールで開催された。出席者は関連する三つの講演などから「どんな人であっても不便を意識せず過ごすことができる、居心地の良いまち」実現のヒントを探り、そのために一人ひとりに何ができるのかを考える機会とした。

 

市が掲げる理念実現目指し

 

 同市が復興まちづくりを進めるうえで掲げる「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」という理念について理解を広げるとともに、障害をはじめ人々の多様性に対する偏見と無関心を払しょくし、行政と住民が目指す方向性を同じくして「世界に誇れる地域」をつくっていこうと開催されたフォーラム。
 この日は冒頭、同市の阿部勝建設部長が、市役所職員の研修、ハード整備におけるユニバーサルデザインチェックリストの作成といった市の取り組みについて説明。まずは行政側から意識改革していることを述べた。
 演台に立った戸羽太市長は、「ノーマライゼーションという言葉がいらない」の意味を説明するにあたり、「たとえば『男女共同参画社会』という言葉も、男女共同参画が実現できていれば存在しえない。同じように、なんの差別も偏見もなく、誰でも普通の暮らしを送れるまちであれば、『ノーマライゼーション』という言葉を誰も意識せず、使う必要もない」と述べ、陸前高田に暮らす人、訪れる人が不便や居心地の悪さを感じることがないような、世界で唯一の市にしたいとの思いを語った。
 続いて、日本障害フォーラム幹事会議長の藤井克徳さん(66)と、㈱ミライロ社長の垣内俊哉さん(27)がそれぞれ講演した。全盲の藤井さん、ずっと車いすで生活する垣内さんだが、2人が共通して訴えたのは「障害があることは問題ではない。問題は障害者を取り巻く環境のほうにある」という点。
 「車いすで移動することが不便なのではなく、段差があるから不便なのであり、『無関心』あるいは『思い込み』があるから居心地が悪いのだ」と述べ、「そうした物理的・心理的な〝障壁〟が取り払われさえすれば、自分たちもほかの人と同じように暮らせる」「ハードは簡単に変えられなくても、向き合う人のハートは変えられる」などと述べた。
 藤井さんは「『陸前高田に住んでいると、障害があることを忘れられる』と思われるようなまちにしてほしい」とエール。「障害がある当事者も、遠慮せずもっと自分たちのことを主張して。まず人と会うことで、無関心や思い込みは取り払える」と語った。
 会場では同市の画家・田﨑飛鳥さん(35)の絵画展も実施。この日は田﨑さんと藤井さんの2人が市の「ノーマライゼーション大使」にも就任した。飛鳥さんの父の實さん(69)は「絵を描き、発表することで、小さいながら障害者も社会参画しているということを知ってもらいたい」と述べた。
 また同市は㈱ミライロと協定を締結。誰にでも使いやすいユニバーサルデザインのまちづくりを進めるにあたり、今後も連携していく。
 参加者からは「一人ひとりが、身近な人にきょう伺ったことを伝えていき、地域で考える機会を増やせば、やさしさのすそのが広がっていくと思う」「私たち障害者も勇気づけられた」といった声が上がっていた。