「住田に誇りを」とIターン、まち家 レストランに東京から坂東シェフ

▲ 厨房内はIターンの坂東さん㊧とUターンの菅野さんによる2人体制に=世田米

 住田町の住民交流拠点施設「まち家世田米駅」内で営業しているレストラン「kerasse(けらっせ)」で今月から、これまで東京都内のレストランで腕を振るってきた坂東誠さん(43)がシェフとして加わった。東日本大震災の翌年から同町の仮設住宅団地を幾度となく訪れ、住民らと交流を深めてきた中で定住を決意。住田や近隣で採れる食材を生かしながら「地元の皆さんが地元に誇りを持てるような店にしていきたい」と、力を込める。

 

震災以降の交流縁で

 

 坂東さんは青森県十和田市生まれ。北海道函館市内の高校を卒業後渡米し、サービスビジネスなどを学ぶ短大やレストラン勤務などを経て、25歳で日本に戻ってきた。これまでは、平成23年3月7日に東京都港区の神谷町にオープンした「IZAKAYA白金魚 PLATINUM FISH」のシェフを務めてきた。
 多忙な業務のかたわら、オープン直後に発生した東日本大震災による東北の惨状に衝撃を受け「動けなくて悔しい思いをしていた」という。そうした中でNPO法人・ソウルオブ東北による仮設住宅団地での料理教室事業に出合い、24年9月に初めて世田米火石団地を訪れた。
 「住民の皆さんに温かく迎えていただいて、外で料理をしながら楽しいひとときを過ごした。その後も復興支援というよりも、会いに来るという感覚」と坂東さん。半年に1回程度のペースで住田に足を運び、自らの店舗でも三陸産の食材を積極的に取り入れたメニューを提供した。
 kerasseは、今年5月から本格的に営業。坂東さんは6月に施設を訪れ、町内各仮設住宅の住民を対象とした料理教室の講師を務めた。その後も町関係者と連絡を取り合う中で、人材不足が続いている現状を聞いた。町や一般社団法人邑サポートなどの橋渡しもあり、8月に住田への定住を決意した。
 料理人として、住田の地については「とてもいい環境。生産者を訪ねて、その食材で直接料理をできるのは理想。地元の人々と密接になり、まちの活性化にもかかわりながら仕事ができる」と魅力を語る。メニューを紹介する黒板には、洋食をベースにしながらサンマをはじめ三陸産魚介類を生かした〝坂東流〟が出始めた。
 厨房内は住田高校出身でUターンを果たした菅野悠太さん(27)と2人体制となり「(菅野さんは)私が持っていないものがあるし、うまくはまるのでは」と期待を込める。そのうえで「まずは地元の皆さんが地元に誇りを持ってもらえるような店にし、そのうえで外からもお客さんが足を運ぶようになれば。料理教室なども積極的に行いたい」と、魅力ある拠点づくりを描く。
 kerasseの営業時間は午前11時30分から午後2時までと、午後6時から10時まで。毎週水曜日定休。電話番号は22・7828。