豊作を地域振興の糧に、ツバキの「種集め」広がる期待/大船渡

▲ 各地で豊作との声が聞かれるツバキの種=末崎町

 大船渡、陸前高田両市の花となっているツバキ。今年は実の付きがよく、豊作との声が各地で聞かれる。樹齢1400年とも言われる日本最古のヤブツバキを御神木としてまつる大船渡市末崎町の熊野神社(志田隆人宮司)でも、境内に設けられている「納実箱」は種の〝奉納〟であふれる。町内にはツバキの搾油所を整備する計画があり、関係者は種を拾い集める活動の広がりに期待を寄せる。

 

搾油所整備の計画も

 

 かつては、気仙の各家庭では庭先に育つツバキの実を搾り、髪の手入れやけんちん汁などの料理に使っていた。現在はこうした光景はほとんど見られず、搾油施設は陸前高田市では矢作町内の「青松館」などがあるものの、大船渡にはない。
 5年7カ月前の東日本大震災以降、気仙には国内外から多くの人々が復旧・復興支援に駆けつけた。その活動の傍らでツバキ資源にふれ、気仙らしい魅力あふれる復興への可能性を見いだす人は少なくない。
 ㈱生成インターナショナル=東京都世田谷区=の山田康生代表取締役(53)もその一人。平成23年3月には「がんばらんば隊」の一員として、大船渡で避難所暮らしの被災者に炊き出しを行った。
 この時振る舞ったのが、つばき油を打ち粉代わりに使って製造されている長崎県五島列島の特産手延べうどん。この縁で「気仙椿」に関心を抱き、実態を調べ始めた。
 山田さんは、決勝大会をプロ野球・千葉ロッテマリーンズの本拠地で行う小学生軟式野球の「リアスリーグ」にも尽力。こうした活動に追われながらも、ツバキを生かした振興策を模索してきた。
 内閣府の専門家派遣として訪れた一昨年には、地元住民組織「三面椿を守る会」の意志を受け継ぐ「三面椿の会」(代表・志田宮司)の発足にもかかわった。現在は、大船渡市農業委員会委員が昨年行ったツバキの実態調査の成果を生かす活動も見据える。
 三面椿や世界の椿館・碁石がある末崎町内に搾油所を設け、来年3月までに稼働させたい考え。ツバキを生かした振興策や、被災跡地の有効活用を見据える。
 気仙両市にそれぞれ搾油所があることで、産業資源と化す種の収穫意識の高まりに期待を込める。大船渡での施設は非加熱方式の搾油(コールドプレス)に特化し、そこからさらに陸前高田の施設で導入している加熱式搾油で搾るといった連携も描く。
 多彩な可能性が広がる一方、現段階では油量確保が課題。住民の積極的な参画がカギを握る。こうした中、気仙にあるマイヤ各店、大船渡市市民活動支援センター(サン・リア2階)、居場所ハウス(末崎町)が収穫した種の受け入れに協力することになった。
 ツバキの種と一緒に住所や氏名、電話番号を記入した紙を添付して、各施設の「椿の実収集ボックス」に届ける流れを描く。三面椿の会スタッフが回収し、換金や椿関連商品との交換などに対応する計画。
 商品開発に関しては、つばき油そのものだけでなく、油を利用した海産加工品や菓子、せっけんなどの商品、葉を利用したお茶などを検討。ツバキに関する活動に熱心な県立大船渡東高との連携を進める。
 山田さんは「『気仙椿』のブランディングを構築し、気仙全体で地域資源を利用して生産される商品の価値を高めたい」と、地域活性化への貢献に力を込める。活動に関する問い合わせは山田さん(℡090・3345・4411)へ。