「本音の議論」行方いかに、三木・ランバーの経営再建方針巡り/住田町

▲ 住民と町当局が近距離で意見交換=大股地区公民館

 住田町が14日夜から始めた三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)に関する住民説明会では、多田欣一町長をはじめ町と住民による「本音の議論」が交わされている。住民や行政、関係機関が一丸となって経営改善へと歩み出そうと理解を求める町側。住民は「退路も考えるべき」「融資からもう10年になる」と厳しい声を寄せつつ、経営責任の明確化や具体的な利益確保策を追及する。説明会は22日(火)まで残り3会場で行われるが、議論で浮かび上がった課題は住民が実感できる形で解決されるのか、今後はさらなる正念場を迎える。

 

町は“一致団結”求める、住民からは厳しい声多く

 

 15日夜、2会場目となる大股地区公民館で行われた説明会。住民出席は5人で、多田欣一町長らとテーブルを囲み、町側が示した両事業体の経営再建方針や現在の経営状況をもとに意見を交わした。 多田町長は、10日に町議と意見交換の場を設けたと説明。「議場での質問する立場、答弁する立場ではなく、一緒に『なぞにしたらいかんべ』を話し合いましょうと設けた。三木を倒産させても、何も良いことはない。地域経済に与える打撃だけが大きく、融資金が返ってくる可能性は極めて小さい。そして、借りた金は返すのが原則。それは最終的に意見の一致をみたところ」と振り返った。
 一方で住民からは厳しい発言が寄せられた。「融資の償還期間は平成50年度までとなっているが、東日本大震災の復興事業が終わり、東京五輪の特需が過ぎれば、厳しい情勢になる可能性がある。退路も考えるべきでは」「身売りをしてその売却分から回収する方がいいのでは」など、再建方針の見通しに不安をにじませた。
 19年度までに両事業体は町から合わせて7億9000万円の融資を受けたものの、計画通りの償還に至っていない。この現状に加え、町有林原木未納額は2億2584万円に上っており「材料代を払っていないとはどういうことか」との声が飛んだ。これに対して町側は、本年度分は支払われていることを明かした。
 三木の経営再建方針によると、本年度は月間売上目標を1億2000万円とし、8~10月は1億1000万円台が続くなど目標数値には近づいている。29年度は1億3000万円、30年度は1億4000万円を掲げ、実現に向けてけせんプレカット協同組合との協力体制をより強固にする姿勢を示す。
 計画通り年間3000万円余の融資償還が始まるのは「遅くとも31年度から」との方針。町は、これとは別に年度内に弁護士を通じて理事や保証人に請求していく姿勢も示した。
 けせんプレカット、三木、ランバーは、世田米田谷地内に隣接する形で工場を構える。ランバーの工場で丸太を集成材用ひき板(ラミナ)に製材、乾燥して三木などに供給している。
 意見交換では、三木に占めるプレカットへの売上割合も話題に。町では「28年度上期には12%になっているが、1、2年前はゼロだった。三木からプレカットに流れれば、輸送しなくてもいい。今、体制をつくり直している。方針では(28年度以降)28%としているが、割合が上がれば経営も助かる」との認識を示す。
 住民側ではこのほか「この問題が表面化したのは平成19年度。(解決に)ずいぶん長くかかっている」との声も。「住田の製材所から三木にどのくらい製品が入っているのか」と、木材流通の現状を質す発言も寄せられた。
 今後の難局打破に向け、多田町長は町としての「お願い」にも言及。「残っている(三木の)45人の従業員は必ず立て直して、借金を返そうと一生懸命やっている。この人たちの力を引き出していきたい。三木がつぶれ、みんな散り散りになれば公民館や消防、PTAの活動も下火になる。町民から『頑張れよ』と言ってもらう企業にならないといけない」と、力を込めた。
 今後は18日(金)に五葉地区公民館、21日(月)に上有住地区同、22日(火)は町役場で開催。時間はいずれも午後7時から。