少花粉スギのコンテナ苗を植栽、世田米の民有林で植え替え・植伐一貫作業実証/住田(動画、別写真あり)

▲ 住田で育ったスギ苗を植える参加者=世田米

 住田町世田米竹之原地内の民有林で25日、スギ花粉症対策苗の植え替え・植伐一貫作業実証に向けた植栽が行われた。県林業技術センターが開発した少花粉スギ品種を町内の苗木生産者が育て、地元の素材生産業者が伐採した地に森林組合が植える林業版「地産地消」と言える取り組み。民有地での少花粉スギのコンテナ苗植栽は県内初といい、関係者は住田の地から広がる林業振興に期待を込めた。

 

県内初の取り組み

 

 記念植栽はノースジャパン素材流通協同組合(鈴木信哉理事長、盛岡市)が主催。各組合員が生産するカラマツ、アカマツ、スギの共同販売や、合板工場などの加工業者に計画的・安定的に供給する流通システム構築を主な事業としている。気仙地方林業振興協議会と、気仙地方森林組合が共催した。
 現地での式典には主催、共催団体の各関係者約50人が出席。鈴木理事長は「伐採跡地には、確実に木を植えていくことが必要。今回植える苗木は住田で生産されており、地元でのこうした循環利用が今後県全体に広がっていけば」とあいさつした。
 林野庁森林利用課の赤堀聡之課長、県大船渡農林振興センターの中村勝義所長、気仙地方森林組合の?木澤光毅代表理事組合長、森林所有者で前住田町長の菅野剛氏が祝辞。参加者は花粉症対策苗の特徴や植栽方法を確認したあと、急斜面に広がる0・1㌶の再造林地に約200本を植えた。
 少花粉品種とは、平年は雄花が全くつかないか、極めて少量にとどまり、花粉量が多い年でもほとんど花粉を生産しない特性をもつほか、さらに林業用種苗として適したものを指す。県林業技術センターによる開発と供給の研究は、平成6年から始まった。
 採穂したものをさし付けして発根苗を生産し、苗木生産者に販売。下有住にほ場を構える吉田樹苗(吉田正平代表)では、コンテナ苗を育ててきた。
 コンテナ苗はあらかじめ専用の容器で育てるもので、根が乾燥にさらされにくいといった特徴があるほか、軽量で小型であるため植栽時に土を掘る作業の軽減化にもつながる。効率的に生産でき、植栽可能時期が長いといたメリットもある。
 スギの花粉症は、今や国民的症状となっており、多分野での防止策が急務。林業部門ではスギ林の他植樹林への変換、少花粉などへの植え替えが行われている。
 ノースジャパンでは、本年度から花粉症の原因である花粉飛散源の削減や伐採跡地の再造林化に向け、林野庁の助成事業「花粉症対策苗植替促進事業」を活用。組合員や森林所有者、気仙地方森林組合などの協力を得ながら進めてきた。
 実証地の山林では、今年夏から秋にかけて56年生のスギを伐採。㈲松田林業(松田成輝代表取締役)などが伐採作業に加え、植栽に向けた地ごしらえも担った。今回の植栽作業では、㈲川又林業(川又正人代表取締役、盛岡市)による背負い式植栽かごや、電動の植穴掘器なども使用し、効率的な作業のあり方を探った。
 35㌢ほどの苗木が植えられた斜面を見上げた菅野氏は「重機での伐採時に、植栽を見据えた地ごしらえもしてもらえれば、トータルコストの低減につながる。国民病の花粉症対策と合わせ、一つの展示林でさまざまな効果を実証できる」と、期待を込めていた。