検証/何が語られたか、住田町の木工団地事業体巡る住民説明会㊤

▲ 経営再建方針を巡り意見交換が行われた説明会=下有住地区

 住田町は先月14日から22日の間に、経営再建が急がれる三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)に関する説明会を5会場で開催した。町内に工場を構えて木工団地を形成し、平成19年度までに町から合わせて7億9000万円の融資を受けながら、計画通りの償還に至っていない両事業体。現状と今後の先行きを示した場で、住民や町当局から何が語られ、どのような課題が浮き彫りとなったのか。先月10~24日に町内11会場で行われた町議会議員と住民との懇談会での意見交換の内容も含め、再び論戦が予想される12月議会を前に検証したい。(佐藤 壮)

 

議論にもどかしさ
「人」の課題も浮き彫りに

 

 利益を継続的に出せる安定経営と、巨額融資の償還をどう両立させるか。事業体が経営再建方針としてまとめた道筋を、町が住民に示した説明会。各会場には、もどかしさがただよった。
 5会場では、住民から同じ内容の発言が飛び交った。
 「経営する本体が来なければ、論議をしても何も始まらないのでは」(14日、下有住)
 「当の組合の人々が、説明すればいいのでは」(15日、大股)
 「三木、ランバーの経営者が話をすべきだが、一回も説明会に来たことがない」(18日、五葉)
 「町長も我々も金を貸している側。町が代弁する形は、ちょっと違うのでは。違和感がある」(21日、上有住)
 「なぜこのぐらいの借金を作ったのか、経営者による反省と原因説明をやるべきではないか」(22日、世田米)
 説明会は、多田欣一町長や横澤孝副町長らが出席住民と対面する形で行われた。三木に派遣されている町職員は出席したが、なぜ両事業体を経営する理事らの姿はないのか。もどかしさの要因の一つは、顔ぶれにあった。
 これに対して「私たちもそう思う」と答えた町側。多田町長は、こう語りかけた。
 「理事者の中で、きちっと説明して歩ける人材がいない。自分たちの組合の中身を、十分に知らない理事がおられる。一部の理事が一生懸命事業体を回そうと頑張っている状況。両事業体の中川信夫理事長も高齢で、こういう場に出てくることは難しい。この場は理事長と(昨年10月以降両事業体の支配人となった)泉田十太郎プレカット専務らと打ち合わせしたうえで行っている」(上有住)
 「融資した者として、知らないふりをするわけにはいかない。町民に説明をしないといけない」(世田米)

 住民からは、次のような質問も出た。
 「何を期待しての説明会なのか」(世田米)
 多田町長は、先月10日に町議会議員と意見交換の場を持ったことを明かした上で、こう答えた。
 「このまま見捨てるわけにはいかない。かといって、さらなる融資をすることも町は許さない。今ある経営再建方針に期待しながら、再建の方向で進んでいきたいということで我々は最終的に一致をみた。それについて無理だからやめろということなのか、頑張れと言われるか分からないが、意見を聞きたい」
 仮に経営再建を諦めれば、理事や保証人となっている素材生産業者らの事業にも影響が及び、町全体の経済に大きな打撃を与える。今、両事業体は再生に向かって、従業員主体で利益確保の道筋をつくろうとしている。
 今のこの流れを生かさなければ、町融資の回収も、地域振興も上手くいかない──。多田町長は「最後の砦」(下有住)と表現した。

 説明会で町側はまず、両事業体の経営状況を解説した。平成26年度以降、25年間にわたり年間3000万円余を支払う償還計画。26、27年度と赤字決算に至った中、先月11日時点での回収額は、573万円にとどまる。こうした融資金に加え、事業体の町有林原木未納額は2億2584万円に上る。
 昨年10月から経営改革に着手し、生産効率を高める取り組みを本格化。本年度は月別にみると、三木は6月に黒字を達成したが、7月に乾燥機、8月にボイラーの各修繕が入り、連続で赤字。9、10月は黒字を達成するなど、改善傾向が見られる。
 両事業体は、金融機関に対する借入も抱える。28年度は長期、短期合わせて6500万円余り。経営再建方針では、町への融資償還に関しては遅くとも金融機関への返済が大幅に減少する3年後の31年度から当初計画通りの金額を支払うとしている。これまでも巨額融資を行った町の責任、そしてどう回収するかは町議会の場で盛んに議論された。
 今回、こうした「金」の行方に加え、経営者をはじめ「人」の課題が浮き彫りとなった。住民に配られた資料の中には、経営支援アドバイザーによる検証が添えられ、このような指摘があった。 
 「泉田支配人の強力な指導のもと改善が進められているが常駐しておらず、経営意思の徹底に不十分な点がみられ、業界に精通した強い意志力を持った人材の常駐が望まれる」
 多田町長は、ここ数年、常駐できるリーダーを探している一方、なかなか見つからない現状も明かした。償還は、今後20年以上続けていかなければならない。中長期を見据えた経営者常駐の道筋が明確に示されなかったことも、もどかしさにつながった。