新たな歴史物語る発見も、市立博物館で遺跡発掘資料展/大船渡(別写真あり)

▲ 震災後の発掘調査で得られた貴重な資料約400点を紹介=大船渡市立博物館

 大船渡市立博物館(小松伸也館長)による特別陳列事業「おおふなと 震災復興 遺跡発掘資料展」は、同館で開催中。東日本大震災後、被災した住まいや公共施設の再建に伴って行われた遺跡発掘調査に焦点を当て、平成23年度から5年間にわたって見つかった資料や成果を紹介。中には大船渡の新たな歴史を物語る発見もあり、同館では多くの来館を呼びかけている。

 

震災後5年間の成果紹介

 

 震災により、市内では多くの家屋や施設が被災。その後、住まいや施設を高台へ移転新築するなどの復興工事が計画され、市教育委員会では全国の専門職員9人や発掘・整理作業員延べ313人の協力を受け、遺跡がある工事予定場所で発掘調査に取り組んできた。
 同展は、市教委が23年度から27年度までに市内17カ所で行った発掘調査から得られた資料を展示し、その成果を広く市民に公開しようと初めて企画。18日に開幕し、資料が出土した16カ所の主な資料やパネルなど、約400点を年度ごとに紹介している。
 5年間の発掘調査では、縄文時代から江戸時代までの各種資料が出土。この中には、市内初、これまで空白となっていた時代を物語るものも見つかった。
 小学校の移転改築に伴う道路新設のため、24年度に調査した鍛冶沢遺跡(三陸町越喜来、調査面積約400平方㍍)では、市内で初めて製鉄炉や鍛冶炉などの遺構を発見。製鉄作業の際に流出したり、炉の中にたまった不純物・鉄滓(てっさい)、ふいごの羽口、木炭などが出土した。木炭の年代から、12~13世紀ごろの鎌倉時代に製鉄が行われていたことが分かったという。
 小学校などの移転改築に伴い、25年度に調査を行った小出館(こいでだて)遺跡(同、同約1万5000平方㍍)は城館跡。山の上にはいくつもの平場がつくられ、掘立柱(ほったてばしら)建物跡、敵の侵入を防ぐ二重の堀と土塁が確認された。山の上にある城全体を調査したのは県内でも珍しく、戦国時代の様子を明らかにする重要な手がかりとなっている。
 ほかの遺跡からも、県北部や青森県で発掘されたものと同じような特徴を持つ縄文土器や、縄文時代の珍しいアクセサリー・けつ状耳飾りなど、新発見が続々。県北部などと同じような特徴の土器からは、現地との文化交流があったことが分かるという。
 会場ではこのほか、本物の土器や鉄滓に触れられるキッズコーナーなども設置。世代を超えて、大船渡の歴史に理解が深められる内容となっている。
 同館では「発掘調査がたくさん行われ、新たに分かったことなどに注目して見てもらいたい。自分の地域に目を向ける機会になれば」と話している。展示内容は今後、一部入れ替えも予定する。
 同展は8月27日(日)までで、3月20日を除く毎週月曜日は休館。開館時間は、午前9時から午後4時30分(入館は同4時まで)。入館料は大人300円で、高校生以下は無料。問い合わせは同館(℡29・2161)へ。