緊急度などを情報共有、救急車と大船渡病院結ぶ/未来かなえ機構が開発

▲ システム開発の進ちょくなどを確認したワーキンググループ=大船渡病院

 気仙3市町の医療機関などでつくる一般社団法人・未来かなえ機構(代表理事・滝田有気仙医師会長)は今月後半から、救急車と県立大船渡病院救命救急センター間を結ぶ救命救急システムの試験運用を始める。救急車に搭載したタブレット端末に搬送患者の緊急度などを入力すると、同病院のパソコンで把握でき、迅速な受入体制準備などが期待される。本格稼働は今秋で、住民登録情報の活用や画像共有など、救命救急体制の充実につながる取り組みとして注目される。

 

新システム試験運用へ

住民登録情報の活用も

 

 同機構は5日、救急体制システムに関するワーキンググループを大船渡病院で開催。病院関係者に加え、大船渡地区消防組合と陸前高田市の各消防本部職員ら18人が出席し、機構側からシステム構築に向けた進ちょく状況が示された。
 このシステムは、現場に出向いた救急車と、救命救急センターをオンラインでつなぎ、搬送中の患者情報を双方向で共有。さらなる救命処置向上が見込まれる。
 大船渡地区消防組合の救急出動件数は、平成28年の1年間で1976件。陸前高田市では843件で、いずれも9割超が大船渡病院に搬送された。住田町や陸前高田市矢作町からの搬送では、現場から病院到着まで40~50分を要することもあるという。 
 搬送時間の有効活用に加え、気仙では独居高齢者が増加傾向にあり、医療にかかわる的確な情報把握が課題になりつつある。同機構では、運用を進めてきた「未来かなえネット」の登録情報を生かしてスムーズな処置などにつなげようと、準備を重ねてきた。
 新システムの試験運用は、大船渡地区と陸前高田の各消防組合が所有する救急車1台ずつで今月後半からスタート。まずは緊急度判定の情報共有を図る。
 現場に出向いた救急隊員は、患者の緊急度をタブレット端末から入力。入力画面は3種類あり、単に緊急度判定の結果を示すものだけでなく、その判定に至った症状が確認できる画面も用意。体の部位別に詳細な情報を入力できる画面もあり、搬送時間など状況に応じて使い分けができる。
 本格稼働時には、気仙に配備されている全9台の救急車にタブレット端末を設置。大船渡地区消防組合の救急車では、患者監視装置から取得した血圧や体温、脈拍といった「バイタル情報」を入れると、自動的にセンター内のパソコンで示される。
 本格稼働時には、搬送患者が未来かなえネットに登録していれば基本情報の参照が可能。アレルギーや既往歴、薬の服用状況などが把握できる。さらに、事故現場や傷病者の写真画像を、センターと共有できる機能の開発も進めている。
 この日は、実際にタブレット画面やパソコンで示される情報を確認しながら協議。救急搬送時間が短いといった場合を除き、なるべくシステムを活用する方向性などを確認した。
 県立大船渡病院の中野達也副院長・副救命救急センター長は「システムを利用することで、救急の場面でもより安全で、質の高い医療がより速やかに受けられるようになる」と話す。
 さらに、本格稼働を見据え「救急車で運ばれる方が未来かなえネットに参加していないと、既往歴や内服薬の確認が遅れてしまい、システム効果を十分に発揮できない可能性がある。この取り組みがきっかけとなり、参加増につながれば」と期待を込める。
 未来かなえネットは住民がいつ、どこで診療・福祉サービスを受けたか、どのような薬を処方したかなどの情報を一元的に集約・管理するもの。参加機関が相互で確認できるシステムづくりを進めてきた。
 登録者は約8700人で、気仙の人口に占める登録率は14%。全国にある同様のシステムと比べて登録率は高いが、今後も随時参加を受け付ける。登録は無料。問い合わせは、同機構(住田町保健福祉センター内、℡22・7261)へ。