盛川で「灯ろう流し」、先祖や震災犠牲者の冥福祈る/大船渡(別写真あり)

▲ 約600個の灯ろうが川岸を照らした=盛町

 大船渡市盛町の盛川流灯会(会長・船山良忠吉野町公民館長)主催の「盛川灯ろう流し」は20日、同町の権現堂橋たもとで行われた。川岸に灯ろうの幻想的な光景が広がる中、地域住民が先祖や東日本大震災犠牲者の冥福を祈って静かに手を合わせた。

 

淡い光が川岸照らす

 

 先祖供養などのため灯ろうを流す旧盆の恒例行事で、100年以上の歴史を持つ。この日は、早朝から地元住民たちが草刈りや会場設営などの準備を行った。
 夕方までには雨もやみ、日が暮れ始めると家族連れが続々と来場。連日降り続いた雨によって川が増水していたため、同日は灯ろうは流さず川岸に飾られた。
 日が落ちると、灯ろうには明かりがともされ、地域住民らは読経が響く中で淡い光を放つ約600個の灯ろうに鎮魂の祈りをささげた。会場には震災供養のための「三重の塔」も設置され、多くの人が礼拝した。
 同町内に住む70代の女性は「平成14年に母が亡くなってからは毎年来ています。毎日、無事に過ごせていることへの感謝を伝えました」と灯ろうを見つめていた。
 同市への派遣職員約10人も運営に協力。神奈川県相模原市から派遣され、24年度の1年間、大船渡市税務課で勤務したデラワリ・ケイさん(30)は派遣終了後も毎年大船渡を訪れており、「大船渡の〝今〟を見たいと思って毎年来ている。きょうは、ご先祖様や震災で亡くなった方々を丁重に送りたい」と会場運営に力を尽くした。
 同日は、日頃市町の長安寺太鼓保存会メンバーによる力強い演奏が繰り広げられたほか、盛町夏まつり実行委員会の協賛による花火も打ち上げられ、行く夏の夜空を美しく彩った。
 船山会長(68)は「家族だけではなく、震災で犠牲となった人たちを供養する気持ちも持ってもらえれば」と話していた。