外国人旅行客の増加を、専用アプリで実証実験/三陸おもてなしステーション

▲ 「三陸おもてなしステーション」が取り組む実証事業の流れ

 気仙を含む県内外の企業など9社による協業コンソーシアム「三陸おもてなしステーション」は22日、経済産業省の「IoTを活用した新ビジネス創出推進事業」を活用した実証実験を開始する。外国人観光客が三陸沿岸を旅行するにあたり、事前の情報収集から旅のもてなし、帰国後のサポートを、スマートフォンの専用アプリで対応。アプリには気仙の観光や地域体験情報、特産品販売なども盛り込まれる計画で、外国人旅行客の着実な増加と平成32年の本格運用を目指す。

 

気仙の観光・物産情報も、きょう開始

 

 経産省は、あらゆるものをインターネットにつなげるIoT技術を活用して、サービス事業者同士が情報を共有・活用した質の高いサービスを提供できる仕組み「おもてなしプラットフォーム」を構築し、32年までの社会実装を目指している。
 具体的には、訪日外国人旅行者が買い物や飲食、宿泊などの各種サービスを受ける際に求められる情報等について、本人の同意を得たうえでプラットフォームに共有・連携し、さまざまな事業者や地域が情報を活用して高度で先進的なサービスを提供できる仕組みを実証。インバウンドの増加を推進していく。
 三陸おもてなしステーションは、㈱ガイアックス(東京都)を代表法人に、県内外の9社で構成。三陸鉄道㈱や、陸前高田市でコワーキング・スペース「ひまわりハウス」の開設などに取り組んだNECネッツエスアイ㈱、気仙の特産品などを取り扱う地域密着型ネットショッピングモール「三陸まるごと市」を運営する㈱ぴ~ぷるなども参画している。
 同事業では、28年度補正予算分の実施事業者として採択を受けた。現在、岩手でこの事業に取り組むのは、三陸おもてなしステーションのみ。
 対象とする三陸エリアは、東日本大震災の影響で観光客数が減少。震災から6年5カ月を過ぎた現在も、震災前の水準には回復していない状況にある。
 同ステーションでは、「地域資源の活用」「情報発信と誘客活動」「地域受け入れ体制の整備」「インバウンド対応」という四つの課題が観光客数増加の障壁になっているとして、三陸鉄道の主要駅を拠点とした実証実験を計画。外国人観光客の着実な増加を重点に据えた。
 スマートフォン、タブレット型端末で利用できる専用のアプリ(英語、中国語に対応)を22日から配信。三陸を訪れる外国人旅行者が旅の前から旅行中、帰国後まで利用できるサービスを提供する。
 サービスは▽地域体験サービス▽現地観光アプリ▽ECサイト▽モバイル決済▽フリーWiFi▽ロボット駅員▽シェアサイクル──の七つ。同ステーションを構成する企業がそれぞれの得意分野を生かし、連携しながら、各サービスの企画、運用などにあたる。各サービスは、10月23日(月)までに順次利用を開始する。
 このうち、地域体験サービスは、暮らし体験マルシェとして、地域体験の提供や情報発信などを行う「TABICA」のインバウンド観光客向けサイト「WOW!JAPAN Experience+」で体験を提供。観光客は旅行日と目的地を入力するだけで旅の日程に合った体験を探し、参加ができる。
 体験例には、三陸鉄道南リアス線による「クウェートからの支援で製造した三陸鉄道車両で車掌体験」などを挙げる。三鉄盛駅では9月から、フリーWiFiの接続チケットの販売も予定されている。
 ECサイトでは、「三陸まるごと市」の海外向けショッピングモールを開設。旅行後における地元特産品の購買、情報取得の継続を目的とする。
 ぴ~ぷるによると、海外に向けたショッピングモールの開設は初の試み。気仙管内を含む17社の商品35アイテムを取り扱う計画で、9月からサービスを開始する。海外発送のため、レトルト食品、乾物、ジュースなどに限られるが、地元の農水産品を加工した新商品、珍しい商品を販売していく。
 同社では、「海外版のまるごと市で注文を受け、どういった商品にニーズがあって通用するのか、その結果が楽しみ」と話し、閲覧、購入状況を見ながら、商品の追加や今後の展開につなげていきたい考えだ。
 おもてなしステーション側では今後、ポスターやチラシを三鉄の各駅などに掲示し、周知を図っていく計画。実証実験の効果を検証しながら、3年後の本格運用を目指していく。