消費者との関係づくりで、内閣総理大臣賞に/綾里漁協青壮年部

▲ 3月の全国青年・女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を受賞した青壮年部のメンバーたち(右から2、3人目)。「漁村の活性化モデルとして期待される」と評価され、新たな勲章が加わった

  農林水産省は18日、平成29年度農林水産祭の各賞受賞者を発表し、大船渡市三陸町の綾里漁業協同組合青壮年部(大平秀男代表)が水産部門で内閣総理大臣賞に輝いた。同漁協が進めてきた消費者と生産者の新しい関係づくりの取り組みが評価された。第22回全国青年・女性漁業者交流大会で農林水産大臣賞を獲得したのに続く快挙に、同漁協は喜びに包まれている。

 

農水省 農林水産祭の受賞者を発表
11月に表彰式

 

 農林水産祭は、国民の農林水産業と食に対する認識を深めるとともに、農林水産業者の技術改善や経営発展の意欲を高めるため、昭和37年から実施されている。
 本年度は、平成28年8月~29年7月までの同祭参加表彰行事298件で農林水産大臣賞を受賞した487点を対象に、農林水産祭中央審査委員会が選考。農産・蚕糸、園芸、畜産、林産、水産、多角化経営、むらづくりの7部門で、最高賞の天皇杯のほか、内閣総理大臣賞、日本農林漁業振興会長賞が選ばれた。
 綾里漁協青壮年部は、3月に行われた全国青年・女性漁業者交流大会でこれまでの取り組みを「つくる人と食べる人の新しい関係」とのテーマで発表し、農水大臣賞を受賞した。
 同漁協が15年にスタートした消費者へのワカメやホタテの直送販売は全国に口コミで広がり、震災直前には販売開始直後の約10倍の売り上げを記録。消費者との信頼関係も少しずつ構築されていった。
 東日本大震災後は、「ホタテやワカメで綾里を知った」という人が綾里へ支援に訪れており、漁業関係者たちは「ボランティアの正体は、信頼関係を築いていた消費者たちだった」と気づかされたという。
 また、同漁協が創刊した「綾里漁協食べる通信」の読者たちによるファンクラブも組織された。首都圏を中心に約150人が会員となっており、海産物を買ってはイベントや店舗で販売するというケースも。そこで得られた利益は綾里を訪れたり、漁協のTシャツを作る費用に充てるなど、ファンクラブ活動に使われている。
 同漁協の取り組みは、生産者と消費者の信頼関係だけではなく、これを共有するファン同士の関係、ファンが新たにつくり出す消費者との関係も紡いだという。
 農林水産祭中央審査委員会では、これらの取り組みについて「積極的な情報発信が実を結び、生産者と消費者が交流を通して新しい関係を築き、消費者が生産者側と同じ考え方の下で地域を応援するという形に発展している」と評価。「漁村地域における活性化モデルとなることが期待される」として内閣総理大臣賞に選出した。
 受賞の知らせを受けた同漁協の佐々木靖男組合長(70)は「東日本大震災からの復興の一助になると思う。後継者である若い人たちが希望を持ってくれれば」と喜びを新たにしていた。
 表彰式は、11月23日(木)に東京都の明治神宮会館で開かれる農林水産祭式典で行われる。