住民登録1万人を突破、未来かなえネット/気仙

▲ 参加申込書に必要事項を記入し、郵送などで提出すれば登録となる=住田町

 気仙の医療機関などでつくる一般社団法人・未来かなえ機構(代表理事・滝田有気仙医師会長)の地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」は、今月に入って住民参加数が1万人を突破し、気仙の住民登録率20%到達が視野に入ってきた。地道な呼びかけが実り、とくに医療機関が少ない住田町内での住民理解が進む。同機構ではさらなる充実を見据え、宮城県内や一関市の医療機関などとの連携を進めるほか、システムを活用する医療機関従事者の研修にも力を入れる。

 

各種医療情報を共有、地道な呼びかけ浸透

 

 同機構は、2市1町の医療や介護、行政関係者らで平成27年4月に設立。23年12月に国から選定された気仙広域環境未来都市構想に基づき、医療・介護・福祉の連携モデル構築を目指す取り組みを重ねてきた。
 未来かなえネットは、登録者がいつ、どこで診療・福祉サービスを受けたか、どのような薬を処方したかなどを一元的に集約・管理。参加する医療機関などが相互で確認できる。
 住民登録は27年12月から本格的に受け付けを始め、運用は28年4月からスタート。各地で住民向け説明会を重ねるなど地道な取り組みを続け、登録者は今月4日にちょうど1万人に到達した。県のまとめによると、先月1日現在の気仙3市町の合計推計人口は約6万1410人となっており、住民登録率は16%を超えた。
 とくに住田町は、人口の約30%にあたる1600人余りがすでに登録。全国的にも30%に到達している自治体は珍しいという。
 町内では一昨年、昨年に相次いで民間医院が閉院。同町から県立大船渡病院に患者を救急搬送する際、現場から病院到着まで40~50分を要することもあり、医療・福祉面での住民不安は大きい。
 下有住高瀬の金野純一さん(73)は、気仙で第1号の登録者。下有住地区で27年11月に行われた説明会でシステムの概要を聞き、すぐに登録を済ませた。「もし私が倒れるようなことがあった場合に、普段どのような薬を服用しているかが分かる便利さがあると思った」と振り返る。
 金野さんは現在、民生委員も務めている。「日々の見守りでは、今はどの病院の診療科に通っているかや、どんな薬を飲んでいるかなど、そこまで突っ込んだところまでは聞けない」と語る。今後を見据え、遠方に暮らす家族をはじめ緊急連絡先を登録できるようになってほしいと期待を込める。
 登録者の医療情報を利用できる気仙の参加施設は、病院、医科診療所、歯科診療所、調剤薬局、介護事業所、行政の各機関を合わせると70を超えた。患者情報の共有で余分な検査や薬の重複を防ぎ、医療費負担軽減や速やかな診療などにつながることが期待される。
 本年度から、救急車と県立大船渡病院救命救急センター間を結ぶ情報共有システムの運用もスタート。昨年試験的に実施したスマートフォンなどから無料で小児科医に相談できるサービス「小児科オンライン」の成果も検証し、今後の展開につなげる。
 機構では現在、一関市内の医療機関参加も進めるほか、宮城県内で展開している同様のシステムとの連携に向けた調整が続く。気仙の住民が、一関市や宮城県気仙沼市の病院を利用する機会は少なくない。広域化によって、さらなるサービス充実を見据える。
 同機構の安部博事務局長は「住民登録がもっと増えれば、さらに効果が発揮される。システムを操作、活用する機関従事者の習熟度を高めるような研修の場を地道につくり、よりメリットを生かせるようにしていきたい」と話す。
 さらに「未来かなえネットの取り組みは、一つのインフラづくり。医療だけでなく、介護や普段の見守りなど、これから何ができるかを住民や医療・福祉機関、行政が一緒になって考えていく形になれば」とも話し、充実への意欲を込める。 
 登録に関する問い合わせは同機構事務局(住田町保健福祉センター内、℡22・7261)へ。