木造仮設団地の再利用は、中上(下有住)の将来像提案/住田(別写真あり)

▲ 模型なども用意して中上団地の将来像を提案=下有住

 住田町の住民組織・下有住いきいき活動協議会(金野純一会長)による新年交賀会「下有住を語る会」は14日、下有住地区公民館で開かれた。今年は東京大学大学院で建築系を専攻する学生ら約20人が、旧下有住小学校グラウンドに整備された木造仮設住宅・中上団地を利活用した高齢者らの住まいの形を提案。地域の魅力を引き出しながら、町が独自整備した木造仮設住宅を後世に残していくアイデアが相次ぎ、地域住民の関心を集めた。

 

東大大学院生らが発表、旧校舎活用含め多角的に

 

 東日本大震災を受け、町は平成23年3〜5月にかけて町内3カ所に木造仮設住宅計93戸を独自に建設。このうち、20年3月に閉校した旧下有住小学校のグラウンドには、町内では最多となる63戸の中上団地が整備された。
 同団地では、復旧・復興事業が進むにつれて入居者が減り、昨年12月末現在の被災者入居は16世帯で34人になった。再利用などのため、すでに9戸が撤去されている。
 また、町内では少子高齢化の進行に伴う課題が山積。同大学院の建築学専攻計画系研究室や復興デザイン研究体では「仮設住宅をリユースした高齢者の住まいの提案」を課題とし、学生らは昨年10月から同団地を訪れるなどして研究を重ねた。
 語る会では、住民ら約100人を前に、5グループが提案。1グループは学生5人で構成し、その大半が留学生となっている。それぞれ▽knot(むすび目)▽移ろいを共にする暮らし▽ねんりん村▽Rooted(根付く)▽住み有住──をテーマを掲げ、地域の将来を見据えた提案を披露した。
 仮設住宅の利用に関しては、バスの待合室やシニアカーの充電駅、食事スペースなど、中上団地外での活用策を示したグループも。6年以上が経過して経年劣化も見受けられる中、2棟から活用できる部材を選び、現在の住宅よりも広い間取りの住まいを造るといったアイデアなども出た。
 また、昭和のたたずまいが残る旧下有住小校舎の活用に関しては、有料老人ホームや入浴施設とし、住環境充実や交流人口拡大を見据えた提案も。「豊かな自然に囲まれている」「遠野、大船渡、陸前高田各市に通勤できる」など、下有住ならではの良さに着目したアイデアもあった。
 全グループの提案を終え、同大学院教授で町地域デザイン会議にも学識有識者として参画する大月敏雄氏は「地元の方々が今後のあり方を話し合う時に『東大の学生があんなことを言っていたな』と思い起こしてもらうことがあれば」と期待。懇親では地域住民と学生がなごやかに語らいながら、より良い地域づくりを探った。
 提案した松田涼さん(22)=東京都出身=は「災害時に、早く住宅を建てるという一点突破だけでなく、いろいろな事情を考えなければならないことを学んだ。復興や土地開発に向けてどのような提案ができるかを考えていきたい」と、将来を見据える。
 ヤン・イエさん(24)=中国出身=は「中国も高齢化の課題に直面していく。将来どういう道を歩もうとも、今回学んだことはとても参考になる」と話していた。