財源確保に新手法、大船渡市と住田町 クラウドファンディング活用/五葉山・石楠花荘改築

▲ 築30年を迎えた今年、改築が行われる石楠花荘=五葉山、資料

 五葉山山頂部近くにある山小屋・石楠花(しゃくなげ)荘の改築財源確保に向け、大船渡市と住田町は新たな試みとして、インターネット上のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」内でのガバメントクラウドファンディング(GCF)に取り組む。五葉山は地元外からも多くの愛好者が登山で訪れることから、広く善意を集めることで改修への機運を盛り上げたいといった狙いがある。 

 石楠花荘は昭和63年に整備。近年は柱材などの傷みが進み、地震や強風による「横の力」がかかると、引き抜きなどが起きる可能性も指摘されていた。
 こうした中、大船渡、住田、釜石の3市町で構成する五葉山自然保護協議会(会長・野田武則釜石市長)は昨年6月、既存の基礎部分を生かして新しい小屋を整備する方針を決定。年内の改築工事着手、供用開始を目指している。
 現段階で見込まれる改築費、資材輸送費などの費用は7000万円超とされる。事業費負担割合は「大船渡市:釜石市:住田町=5:5:2」とするが、県や国の補助事業活用も検討する。
 財源確保策として大船渡市と住田町は今月から、㈱トラストバンク(東京都)が運営する納税ポータルサイト・ふるさとチョイス内のGCFを活用。GCFは「使い道で選ぶふるさと納税」とも称され、自治体が抱える課題解決プロジェクトに共感した人から寄付を募る。通常のふるさと納税と同様に税金控除を受けることができ、プロジェクトによっては謝礼品がある。
 クラウドファンディングは、不特定多数の人がインターネット経由で広く財源提供や協力を求める手法として広がりをみせ、気仙でも民間やNPO団体が復興事業などで活用。自治体事業はまだ少なく、今後の展開が注目されている。
 今月1日からふるさとチョイスのホームページ上(https://www.furusato-tax.jp/gcf/)で呼びかけが始まり、大船渡市は「三陸海岸の霊峰・五葉山に『安全な避難小屋』をつくり、人の命を守りたい!」(募集額1500万円)、住田町は「緑と風の光が織りなすハーモニー 山の魅力を存分に!五葉山『しゃくなげ荘』改築事業にご支援を!」(同600万円)としてPR。5月1日(火)まで受け付ける。
 仮に目標金額に達しなくても、寄付金は両市町に入る。不足分は、他の財源を充てるという。両市町側には、より広範囲に賛同者からの善意を集め、ホームページ上でのPRによって改築事業への理解を広げたい狙いがある。
 大船渡市はすでに、ふるさと納税事業で「ふるさとチョイス」を活用。住田町は初となる。
 町企画財政課では「町民以外にも不特定多数の方々が利用し、愛されている施設。町外の方々が利用したり、人気を集める施設は他にもある中、どの程度効果があるか、試験的な意味合いもある」としている。
 石楠花荘改修を巡っては、五葉山自然倶楽部、釜石市の釜石山岳協会、釜石勤労者山岳会の3団体が一昨年4月に設立した五葉山石楠花荘改修促進協議会で署名、募金活動を展開。募金額は300万円に達し、五葉山自然保護協議会に寄付した。