8年ぶりの漁港開催、越喜来で三陸港まつり/大船渡(動画、別写真あり)

▲ 気迫がこもった演舞を披露する浦浜念仏剣舞=越喜来漁港

 三陸の夏を彩る第44回三陸港まつり(同実行委員会主催)は16日、大船渡市三陸町の越喜来漁港を主会場に開かれた。東日本大震災発生前の平成22年以来、8年ぶりに同漁港での開催となったまつりには、地元住民らが多数来場。市内外の芸能を楽しみ、交流を深め合った。

 

市内外の伝統芸能共演

 

 まつりは、祖先や東日本大震災犠牲者への鎮魂の祈りをささげるとともに、世代間の交流を深め、まちづくりへの住民の意識高揚を図ろうと毎年行われている。大震災以降は三陸公民館などで行われていたが、今回は8年ぶりに同漁港が主会場となった。
 この日のプログラムは、「子ども芸能交流」でスタート。雨のため、会場を同漁港から三陸公民館に移して行われ、三陸町吉浜の吉浜鎧剣舞、同町越喜来の浦浜念仏剣舞、埼玉県の開智中学高等学校が元気いっぱいに演舞した。
 このあと、韓国・トブロン農楽団のチェ・ジェチョルさんが飛び入り参加し、軽快な太鼓の音に乗せた踊りを披露。さらに、大阪府の山本能楽堂が能の演目「石橋(しゃっきょう)」を上演し、来場者を伝統芸能の世界に引き込んだ。
 開智中学高等学校は、27年から同交流に参加し、地元の子どもたちとともに浦浜念仏剣舞を披露していたが、今年は単独で出演。練習期間は2日ほどと短かったが、見事な舞を披露した。同校の野田渚さん(高校1年)は「きちんと踊ることができるか不安だったけど、演じた後は大きな達成感があった。参加して良かった」と笑顔で話していた。
 主会場に近い円満寺から同漁港に向かう灯ろう行列には、多くの地域住民が参加。会場までの約1㌔の道には、青山学院大の学生らで組織する復興支援団体「Youth for Ofunato(ユース・フォー・オオフナト)」や岩手大の協力により、住民が作成した「ペットボトル灯ろう」が並べられ、灯ろうを手にした住民らが「ペットボトル灯ろう」がつくる〝光の道〟を頼りに、越喜来を練り歩いた。
 同漁港到着後は、追善供養を実施。読経が響く中、海に灯ろうが流されると、来場者が静かに手を合わせた。
 引き続き行われた開会セレモニーでは、実行委の古水力委員長が「大震災から8年目で、ようやく元通りのまつりを繰り広げられる。8年前に行われた灯ろう流しを実現することができた」と万感の思いを込めてあいさつ。
 戸田公明市長と熊谷昭浩市議会議長の祝辞のあと、祖先や大震災犠牲者への追悼の花火が打ち上げられ、来場者が復興を願う大輪を見上げていた。
 続いて行われた芸能共演には、金津流浦浜獅子躍(三陸町越喜来)、川原鎧剣舞(立根町)、チェ・ジェチョルさん、山本能楽堂、浦浜念仏剣舞の5団体・個人が参加。それぞれが豪壮な演舞を披露し、観客を魅了した。
 このうち、山本能楽堂は新作能「水の輪」を発表。日本財団の「海と日本プロジェクト」の助成を受けて行われたもので、汚れてしまった川の水を子どもたちが扮(ふん)する水鳥たちが美しく掃除し清めるというストーリー。これにより、きれいな水にしか住むことができないという「水の神様」が現れ、その地の繁栄をことほぐ。
 上演する土地にちなんだ地名や歴史が盛り込まれているのが特徴で、今回も気仙沼や大船渡、越喜来といった地名が登場。また、水鳥役には大船渡市内の小学生10人が出演し、ケセン語でのせりふを発しながら、この日のために練習を重ねた「型」を披露すると、大きな拍手が送られていた。
 出演した盛小の刈谷雅さん(5年)は「(出演前に)舞台裏で見ているときはドキドキしたけど、舞台の上では笑顔になれたし、楽しく演じることができた」と笑みをこぼしていた。
 会場には、漁港での開催を待ちわびていたかのように屋台がズラリ。開智中高の生徒らも子ども向けの出店を開くなど、市内外の団体らが協力してまつりを盛り上げていた。
 来場していた地元の澤田結子さん(65)は「灯ろうが海に流れていくのを見るのはやっぱり良い。地元だけではなく、いろいろな人に協力してもらって、まつりが成り立っているのを感じた。(大震災から)7年以上がたっても、支援してくれる人がいるのはありがたい」と感慨深げに話していた。