無形文化遺産に登録へ、吉浜のスネカなど来訪神行事/大船渡

▲ 「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとして、ユネスコ無形文化遺産への登録が勧告された「吉浜のスネカ」=大船渡市三陸町吉浜(今年1月)

 文化庁は24日夜、国が「来訪神:仮面・仮装の神々」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提案していた大船渡市三陸町吉浜の「吉浜のスネカ」など全国8県10件の伝統行事について、ユネスコの評価機関が無形文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。正式には、来月下旬からモーリシャス共和国で開かれる政府間委員会で決定となる見通し。気仙では初となる無形文化遺産への登録に、地元関係者らは地域の伝統文化継承に向けて誓いを新たにしている。

 

ユネスコの評価機関勧告

来月の政府間委で正式決定

 

 「来訪神:仮面・仮装の神々」は、仮面・仮装の異形の姿をした者が「来訪神」として、正月や季節の節目に家々を訪れ、子ども、怠け者を戒めたり、人々に幸や福をもたらしたりする行事。行事は世代から世代へと受け継がれ、地域の結びつき、世代を超えた人々との対話と交流が深められている。
 国は平成28年、国指定重要無形民俗文化財である、吉浜のスネカ、甑島(こしきじま)のトシドン(鹿児島県薩摩川内市、21年無形文化遺産登録)、男鹿のナマハゲ(秋田県男鹿市、23年無形文化遺産「情報照会」)、能登のアマメハギ(石川県輪島市、能登町)、宮古島のパーントゥ(沖縄県宮古島市)、遊佐の小正月行事(山形県遊佐町)、米川の水かぶり(宮城県登米市)、見島のカセドリ(佐賀県佐賀市)の8件を、無形文化遺産への登録に向けてユネスコ事務局に提案。しかし、同年の審査は世界各国からの提案件数が上限を超えたため、1年繰り延べとなった。
 29年には、国が新たに国指定重要無形民俗文化財に指定した薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島県三島村)と、悪石島のボゼ(同十島村)を加え、計10件のグループとして再提案。今回、ユネスコ無形文化遺産保護条約政府間委員会の評価機関による事前審査において、無形文化遺産への登録にあたる「記載」の勧告を受けた。
 吉浜のスネカは、吉浜地域に江戸時代から伝わる小正月の伝統行事。子どもの健やかな成長、五穀豊穣や豊漁を祈願する行事であり、現在は吉浜スネカ保存会(柏﨑久喜会長)を中心に、地元の中学生も参加しながら伝承活動に取り組んでいる。国の重要無形民俗文化財には、16年に指定を受けた。
 わらみのやアワビの殻を身にまとい、鬼とも獣ともつかない恐ろしい形相の面をかぶったスネカが家々を訪問。「泣くワラシいねえがー」などと大声を出しながら、各家の子どもや怠け者をいさめる。
 その存在は、「奇怪なもの」「えたいの知れないもの」とされる一方、里に春を告げ、五穀豊穣や豊漁をもたらす精霊であるともいわれる。スネカの名称は、冬の間、仕事をせずにいろりのそばに居続けたため、赤いまだら模様の斑点ができた怠け者のすねの皮を剥ぐという「スネカワタグリ」が語源とされている。
 スネカを含む来訪神行事の無形文化遺産登録は、来月26日(月)から12月1日(土)までモーリシャス共和国の首都・ポートルイスで開かれる第13回政府間委員会で正式決定となる見込み。正式に決まれば、県内では花巻市大迫町の「早池峰神楽」に続く2件目、気仙では初めての無形文化遺産となる。
 今回の勧告について、同保存会の岡崎久弥副会長(43)は「これまでと何も変わらない。後継者を育て、このままの形で伝統を次世代につないでいくのが、私たちの義務」とコメント。
 戸田公明市長は「吉浜地区において長い歴史の中で育んできた地域の伝統行事が、ユネスコ無形文化遺産への登録にふさわしいとして世界的な評価を得たことについて、大変うれしく思う。政府間委員会では、勧告の通りに決議されるよう期待している」と話していた。