「日常の幸せ」じっくりと、すみカルチャーで脚本家・岡田惠和氏が講演 /住田(別写真あり)

▲ 来場者の間近で、脚本に込める思いなどを語った岡田氏=まち家世田米駅

 NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』『ひよっこ』などを手がけた脚本家・岡田惠和氏による講演会は10日夜、住田町世田米のまち家世田米駅で行われた。岡田氏は「日常の中の幸せ」を数多く描いてきた思いなどを語るとともに、来場者からの質問にも丁寧に回答。ドラマ作品が持つ魅力を、じっくりと伝えた。
 講演会は、同町の一般社団法人SUMICA(村上健也代表理事)が主催。住田の活性化につながる事業を展開しており、すみカルチャーではミュージシャンや落語家をはじめ、さまざまな分野で活躍する著名人を招いてきた。
 この日は、町内外から約60人が来場。冒頭、村上代表理事は「物語をつくるプロに来ていただいた。皆さん楽しんでいただき、明日につながる糧にしてもらえれば」とあいさつした。
 岡田氏は雑誌ライターを経て、平成2年に脚本家デビュー。繊細なタッチの物語世界や前向きなキャラクター造形、会話劇で幅広いファンを獲得し、連続ドラマや映画、舞台などで数多くの人気作を手がけてきた。
 講演では、昨年放映された自身3作目となる連続テレビ小説で、来春には続編が放送されることが決まった『ひよっこ』のエピソードを紹介。「朝ドラの中で、最も地味なヒロインを描きたかった」と明かした。
 そのうえで「夢に向かって真っすぐ走っていくだけが、ヒロインなのかという思いがあった。今は『変わった人でいたい』『個性的でいないといけない』ということが、世の中に生きづらさを与えているのでは。『その他大勢』の一人かもしれないが、そういう人生も輝いているし、すてきだと思う」と語った。
 また「もし自分が岩手で朝ドラをやるとしたら、冬の寒さをつらく描くのではなくて、四季を通していろいろな暮らしや楽しさがあったりとか、そんな風にやれたらいいな」とも話した。
 病気がちだった少年時代の思い出にもふれるなど、「普通の人の幸せ」を描くルーツにも言及。ドラマが持つ力については、「知らない人生を知るためにある。つらいのは自分だけじゃない、みんながんばっている、自分もこれでいいんだと思いながら、楽しんでもらえる作品をつくっていきたい」と話した。
 講演後、一問一答コーナーでは「日常の幸せを、物語に落とし込むための工夫は」との問いかけも。岡田氏は、何気ないあいさつのシーンを省かず入れることで心境の変化などを表現するこだわりを明かしたほか、「幸せとは、変化がないこと。きょうと変わらないあしたがあることが幸せ」と、日常の大切さにもふれた。
 一人一人にじっくりと語りかけるような口調で、脚本に込める思いなどを伝えた岡田氏。来場者は終始熱心な表情で耳を傾けながら、作品で描かれてきた「普通の幸せ」をかみしめていた。