2019陸前高田市長選/「継続」と「改革」の選択に、戸羽・紺野両氏が立候補

現・新一騎打ち、1週間の舌戦スタート

 

 任期満了に伴う陸前高田市長選は27日、告示された。届け出順に、ともに無所属で、3選を目指す現職の戸羽太氏(54)=高田町=と、新人で元県企画理事の紺野由夫氏(59)=横田町=が立候補。戸羽氏は高田町の市役所前、紺野氏は同町の事務所前で第一声を上げ、2月3日(日)の投開票に向けた選挙戦をスタートさせた。現在の市政を継続させるか、刷新によって改革を図るのか。加速を続ける人口減少と高齢化への対応、産業振興と地域活性化策、今後の行財政運営のあり方、途上にある復興の進め方などを巡る両氏の訴えに、有権者がどのような判断を下すのか注目される。(2、7面に関連記事)

 

投開票は2月3日


 立候補の届け出は午前8時30分から市役所で行われ、抽選の結果、届出順は戸羽氏が1番、紺野氏が2番となった。その後、新たな届け出はなく、両氏による争いが確定した。
 今市長選は昭和30年の市制施行から17回目で、東日本大震災発生後は2回目。2人の候補者による一騎打ちは平成11年の12回目以降、6回連続となる。
 32年度内と国が定める復興・創生期間まで残り約2年。市民は、これまで進められてきた復旧・復興施策のあり方、予算、職員ともに縮小する33年度以降の財政運営や庁内改革などに関する両候補の考えに注目している。
 また、少子高齢化が進む中にあって、産業振興と充実した医療・福祉施策、移動手段を持たない人にとって使いやすい公共交通網の整備、定住・交流人口増につなげる地域資源の活用など、問われる課題は多岐にわたる。多くの人々がこのまちの目指す針路を共有し、手を携えながら未来に歩めるような論戦が求められる。
 投票は2月3日午前7時から午後7時まで市内25カ所で行われる。開票は同8時15分から夢アリーナたかたで実施される。
 当落の大勢が判明するのは、同9時30分ごろとなる見込み。
 市選管ではすでに、投票所入場券を発送。期日前投票は28日から2月2日(土)までの午前8時30分から午後8時まで、市役所3号棟1階第2会議室で行うことができる。
 長期出張等で市外に滞在していたり、大震災後、市外に避難している人などは、それぞれの市町村選挙管理委員会で不在者投票ができる。希望者は陸前高田市選挙管理委員会委員長あてに直接、または郵便で投票用紙の請求を。投票用紙は選管から郵送される。
 同市の有権者数は昨年12月3日現在で、男8137人、女8684人の計1万6821人。

 

戸羽  太 候補(無・現)

「復興実感できるまちを」

 戸羽候補が第一声を上げた場所は、4年前の前回選と同じ高田町の市役所前。午前8時ごろから支持者が続々と姿を見せ、約300人が集まった。
 選対本部長で、選挙戦を支える「あたらしい陸前高田市をつくる市民の声」の菅野隆介会長は、戸羽候補がこれまで50回重ねた各地での対話集会や実績を紹介し、「いよいよ7日間の戦いとなる。8年間の互いの苦労を忘れずに、戸羽候補と一緒に全国どこにもない優しさと笑顔のまちをつくらなければならない。皆さん一丸となって戦いましょう」と支持を呼びかけた。
 応援に駆けつけた戸田公明大船渡市長は「復興を収束させるという仕事をやり遂げられるのは、戸羽候補しかあり得ない。大船渡からもしっかり応援していく」と力を込めてエール。伊藤明彦市議会議長、黄川田徹元衆議院議員、この日告示された市議補選に立候補し、戸羽候補と連動する橋詰清候補も、復興を総仕上げするかじ取り役として戸羽候補の「続投」に期待を込めた。
 マイクを握った戸羽候補は、朝から集まった支持者に改めて感謝。今回の選挙の争点について「復興後を語る前に、今を語るべきだ」とし、住宅再建が進む一方で、今なお応急仮設住宅に住む被災者の現状に触れたうえ、「まだ苦しい思いをしている人たちをしっかりフォローし、復興をやり遂げなければならない」と強調した。
 2期8年の中で築いた外部とのつながりから構想が生まれ、今後実現を目指す農業振興を図る一大プロジェクトにも触れ、「今、私が立ち去れば、プロジェクトは実現できないかもしれない。皆さんが復興を実感できる形を、『陸前高田は最高だ』というまちを、私につくらせてほしい」と訴えた。
 第一声後は、参加者全員で「ガンバロー」を三唱。多くの声援に笑顔で応え、遊説へと繰り出した。

 

紺野 由夫 候補(無・新)

「勇気持って市政刷新を」

 

 高田町にある紺野候補の選挙事務所では、午前8時から出陣式を行い必勝を祈願。「七つ道具」がそろったころには、約400人が詰めかけた。

 米谷春夫総括責任者は「紺野さんは人格識見、行動力ともに素晴らしく、クリーンな人柄」としたうえで、現市政が計画する7階建て新市庁舎建設を批判。「今選挙は市民の良識が問われるものであり、もしも市政の〝継続〟を選べば、陸前高田は崩壊と衰退の一途をたどる。紺野由夫をもって〝革新〟を」と呼びかけた。
 続いて、住民代表の菊地将大さんと大和田加代子さんが、それぞれ「きょうをきっかけにこのまちは生まれ変わる。戸羽市長によるきれいごとだけの陸前高田は終わり」「紺野さんはこの短い期間に3回も市内全戸を回ってくれた方。市民の声なき声を拾い上げてくれる〝紺野市長〟の誕生を願う」と激励。福田利喜市議もエールを送った。
 最後に登壇した紺野候補は「きょうのこの快晴の空のように、一点のくもりもない市政を実現する」と宣言。2年後の復興期間終了後に市の財政運営は厳しい局面を迎えるとし、「そういう危機感が今のこのまちにはない」と福祉をはじめとした行政サービスの低下に懸念を示した。
 そのうえで、必要なサービスを継続・充実させるため、行政経費の抑制に取り組むとともに、「産業振興を図り、税収を上げる。これが行政の基本だ」と強調。安心して子どもを産み育てられる環境づくり、福祉の充実、教育振興の実現を誓った。
 紺野候補は「県庁での36年の実務経験を市の発展のため役立てたい。皆さん、〝変える勇気〟を持って、私に力を与えてほしい」と市政の刷新を訴えた。
 全員で「ガンバロー」を三唱し、紺野候補は集まった支持者らと握手。熱い声援を背後に受けながら選車に乗り込み、遊説をスタートさせた。