1000回目の「ありがとう」、奥野さん(大阪)が仮設で最後の記念ライブ/大船渡(別写真あり)

▲ パワー全開の歌声で元気を届ける奥野さん㊨

 気仙をはじめ、全国の被災地でライブを開いている大阪府高槻市の歌手・奥野ひかるさんは4日、大船渡市猪川町の長洞仮設住宅集会所で1000回目の記念ライブを開いた。同市で行う最後の仮設住宅ライブと位置づけ、「みんなが待っててくれたから今日を迎えられた。ありがとう」と感謝を歌に込めた。

 

元住民らに感謝の歌届ける

〝復興の歌姫〟今後も

 

 奥野さんは、東日本大震災後の平成24年2月に大船渡市内で初の慰問ライブを開き、その後も気仙各地の仮設住宅を巡ってライブを展開。パワフルな歌と親しみやすい人柄で住民らに生きる元気を〝注入〟し、いつしか「仮設の歌姫」「復興の歌姫」と呼ばれるようになった。
 平成27年5月から約1年間は、盛町の旧沢川仮設に住み込み、地域住民と生活を共にしたこともある。28年6月に同仮設で行った700回目のライブ以降は、仮設の枠を越えて活動。国内各地の自然災害被災地にも足を運び、住民の心に寄り添った歌を届け続けている。
 同市では、現在残っている仮設住宅2団地の入居者が、今月末までに全員退去する見込み。累計1000回目のライブは、仮設ライブの出発点であり、仮設がなくなる同市での開催を決めた。
 この日は、気仙各地の元仮設住民や、昨年11月に奥野さんを「さんりく・大船渡ふるさと大使」に任命した同市の戸田公明市長ら約40人が来場。期待が高まる中、純白のドレスと髪飾りを身につけた奥野さんが『なにわの女』を歌いながら登場し、多くの拍手に迎えられた。
 奥野さんは、仮設ライブでおなじみとなった復興応援歌『がんばっ節』や『ひかるのズンドコ節』、娘を亡くした被災者との出会いがきっかけで生まれた『結~再会~』、ライブ活動を支えてくれる人たちへの感謝を込めた『ありがとうのうた』などを熱唱。それぞれの曲が誕生したエピソードも添えた。
 聴衆は、ノリのよい曲では大声で合いの手を入れ、しっとりとしたバラード曲では、体を揺らしてじっくり聴き入った。幕あいでは、奥野さんの「私の歌を聴いて、〝生きてみよう〟と言ってくれた人がいたから続けられた」「一生懸命生きることが、復興の形だと思う」「待ってくれる人がいる限り、これからも歌い続ける」という言葉に耳を傾けた。
 アンコールの『ひかるtheSORAN』では、奥野さんが歌うそばで踊り出す人も。みんなで笑顔を広げ、ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
 長洞仮設の元住民で、盛町の災害公営住宅に住む栗村慶子さん(77)は「ライブは2、3回見たことがあるが、今日が一番心に響いた。奥野さんの力強い歌を聴いて、自分も気持ちが上向きになった。これからも元気で、また大船渡に歌いに来てほしい」と話していた。
 奥野さんは「大船渡の仮設住宅でライブを行うのは最後となったが、みなさんが求めてくれる限りまた歌いに来る。これからもみなさんに生きる活力を届ける活動を続けていきたい」と笑顔で誓っていた。