災害に備え学び深める  実践的防災講座を市内で初めて企画 大船渡(別写真あり)

▲ グループワークなどが行われた「実践的防災講座」

 陸前高田市の一般社団法人トータルセーフティネット(新沼真弓代表)による「実践的防災講座」は12日、大船渡市大船渡町の防災観光交流センター(おおふなぽーと)で開かれた。自然災害といった危機への対応を学ぼうと、市内では初めて企画。講義やグループワークが行われ、参加者らは東日本大震災の被害状況などに改めて理解を深めながら、危機対応に必要な判断力と臨機応変力を身に付ける機会とした。

 

危機対応に必要な力を

 

 同講座は、万が一の災害に備えて対応のあり方などを学び、判断力や臨機応変力を鍛える場にしようとの目的で、「新しい東北」官民連携推進協議会の連携事業として開催。日本防災士会県支部と連携し、NPO法人おおふなと市民活動支援センターが後援した。
 この日は、市内外から約10人が参加。元県総合防災室防災危機管理監で、現在は岩手大学地域防災研究センター客員教授などを務める越野修三氏が講師を務めた。
 二つの講座が行われ、前半は「危機への対応~東日本大震災の教訓から学ぶ~」を展開。越野氏は、震災における陸前高田市や大槌町など各地の被害状況、行政対応などを解説し、危機に対応するために何が重要かなどを説いた。
 この中では、「正常化の偏見をなくすには、行動のパッケージ化が必要」として、「普段は経験しない危機的場面について、『この状況の時はこうする』という事前行動計画を作り、訓練を通して徹底させることが大切。また、普段経験しない場面では、認知から判断、行動の流れに移るには時間がかかるため、認知から行動に至るまでの過程をパッケージ化してもらいたい」と呼びかけた。
 後半では、「判断力と臨機応変力を鍛える・ケーススタディ型グループワーク」を実施。
 目的・目標を達成するために状況の変化に対応し、当面の状況を分析して、どのような行動をとるのがベストかを判断する「状況判断」を身に付けるためのグループワークを行った。
 この中では、「夜間に洪水の危険性があるとして避難勧告が出た場合、川の近くにある自宅から徒歩で15分かかる避難所に、足を痛めた家族らを連れて移動すべきか」との問題に対し、グループごとに意見を交換。
 必ず達成しなければならない目標が何か、何を判断すべきかを列挙して比較したうえで話し合った。いずれのグループも「家族全員の安全を守るのが目標。自宅の2階で待機を」との結論を導き出した。
 越野氏は「普段から思考過程に沿って判断をしていると、災害時などの判断が必要なときに利用できる」と述べ、日ごろから訓練を重ねておく大切さにも言及した。
 参加者らは「災害が自分の家の近くで起きたらとはなかなか考えないものだが、これからは危機感を持って過ごしていきたい。とても参考になった」「行政目線の危機管理に対する考え方が分かりやすかった」「普段の選択の過程の中で、できることがあるんじゃないかと学んだ」などと感想。新たなネットワークも築き、交流を深め合った。