「木と鉄」のつながり学ぶ 栗木鉄山で地域創造学 世田米小5年生 住田(別写真あり)

▲ 石垣が残る部分などを巡りながら、かつて盛んに営まれた製鉄業を学ぶ児童たち

 住田町立世田米小学校(田代航校長)の5年生19人が14日、町内小中高校が実践する独自教科・地域創造学の一環で、世田米の栗木鉄山を訪れた。かつて盛んに行われていた製鉄の名残や生活を営んでいた人々の足跡をたどり、周囲で確保できる鉄鉱石や木炭となる森林、川水を生かした産業に理解を深めたほか、地域資源の奥深さや、先人の工夫の一端にふれた。栗木鉄山は本年度も、国史跡指定申請に向けた準備を進めるとともに、授業や生涯学習でも生かされる。

 

自然活用の歴史に理解

 

 町内小中高校は平成29年度に文部科学省から研究開発学校指定を受け、30年度から地域創造学の本格的な実践を始めた。授業を通じて、地域に根付いた自然資源や文化などを生かした心豊かな学びの創設を目指し、変化の激しい社会下でも主体的に未来社会を創造していくことができる「社会的実践力」の向上を目指している。
 各学校では、本年度も地域の伝統文化や自然資源を生かした多彩な授業を展開する計画。同校5年生は、これまで町内で盛んに行われてきた産業を学ぼうと、栗木鉄山を訪れた。
 栗木鉄山は主に、世田米の国道397号栗木トンネルの種山側に位置し、付近には大股川が流れる。明治から大正にかけての製鉄所で、一時は国内4位(民間3位)の銑鉄生産量を誇った。高炉設備だけでなく、工員住宅や購買など「鉄の村」として従事者の生活基盤もあったとされる。
 現地を案内したのは、町教育委員会の松高宏輔主事。児童たちは第一高炉跡や本社事務所跡に加え、今も残る水路の石垣などを巡り、製鉄が営まれていた歴史にふれた。
 松高主事は、製鉄には鉄鉱石と木炭、高炉内の温度を上げるための送風が必要だったと説明。鉄鉱石は種山に近い奥州市江刺の人首(ひとかべ)地域から確保でき、燃料源となる木炭は周囲の山々に育つ樹木を生かしたほか、近くを流れる大股川からの水を引いて水車を動かし、風を送っていたことを伝えた。
 さらに、山あいの地形を利用し、高炉までスムーズに鉄鉱石を投入できた省力性にも言及。そのうえで「こうした山地型高炉は、他のところではめったに見られない」と強調した。
 また、平成9年に町史跡指定、同11年に県史跡指定を受けていることにもふれ、さらなる史跡価値の明確化につながる国史跡指定申請の準備を進めている現状も紹介。未来に残すべき文化的遺産として、関心を持つよう期待を込めた。
 説明を聞いた5年生の遠藤優依さん(10)は「最初は分からないことが多かったけど、地域の歴史や鉄のことをいっぱい勉強できた」と話し、笑顔を見せていた。
 5年生は今後、地域創造学の授業で、見学で学んだ内容をまとめたミニ新聞づくりに取り組む計画。さらに現在営まれている林業も学び、森林をはじめ地域資源を生かした地元産業の特色や強みなどについて広く理解を深めることにしている。