来年度中に利活用策決定 中上仮設団地(下有住)の跡地 「後方支援レガシー」の要素も 住田町

▲ 中上仮設住宅団地跡の利活用で意見交換が行われたデザイン会議

 住田町は8日に開いた町地域デザイン会議の場で、東日本大震災直後に整備された下有住の応急仮設住宅・中上団地の跡地利活用策を、来年度中に決める方針を明らかにした。地域からの要望や同会議での議論、地域住民との対話などを経て決める見込みだが、下有住の拠点としての役割や、独自で震災後方支援にあたった「レガシー(遺産)」としての要素などを考慮することにしている。

 

地域の要望を考慮

 

 地域デザイン会議は、今後実施される各種ハード事業に向け、構想段階から役場内部で情報共有を密にし、有識者のアドバイスも交えて総合的な観点で検討していこうと平成29年度に設置。今回の会議は、本年度初の開催となった。
 委員のうち、学識経験者は大月敏雄氏(東京大学大学院工学系建築学専攻教授)柴田久氏(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)南雲勝志氏(ナグモデザイン事務所代表)の3人。この日は大月、柴田両氏と、町の総務、企画財政、町民生活、保健福祉、農政、林政、建設各課や教育委員会の職員ら約20人が出席した。
 中上団地は旧下有住小グラウンドに整備し、面積は約1㌶。旧校舎や生涯スポーツセンターに隣接するほか、近くには下有住地区公民館や町営住宅団地もある。
 東日本大震災発災2カ月後の平成23年5月下旬に63戸が完成。これまで、被災者180人余りが居住した。
 すべて木造戸建てで、このうち払い下げ・解体(予定含む)は13戸。利用期限は原則来年3月までで、現在実際に寝泊まりをしている利用は2世帯4人となっている。
 下有住小学校は統合に伴い、平成20年に閉校。仮設住宅が建設される前は、地区住民による運動会や月山神社の式年大祭などで利用されていた。
 同地区の地域協働組織・下有住いきいき協議会は今月7日に役員会を開催し、団地跡の利活用について協議。仮設住宅からプールまでをすべて解体し、震災前に住民が植えた芝生の原状復帰や、グラウンド内にトイレを設置するよう町に要望することを決めた。
 活用方法については、今後も引き続き地区内で検討する方針。住民からは、幅広い世代が利用できる憩いの場としての活用や多目的グラウンド、旧校舎部分に冬期間に独居高齢者らが過ごすシェアハウス、仮設住宅の対外的なPRといったアイデアも寄せられた。
 デザイン会議の場で町側は、現段階では「具体的にどうするか、話は進んでいない」と説明。下有住地区内での検討や、町に寄せられた要望を受け、来年度に庁内検討や地域住民との対話を経て、活用策を決定する方針を示した。
 さらに、今後の検討で考慮すべき点として▽小学校跡地であり、地区公民館に隣接する地域の拠点▽東日本大震災後方支援の「レガシー」としての要素▽築60年以上が経過したの旧校舎などを含めた一体整備──を挙げ、委員から意見を求めた。
 委員からは「何年かに分けて段階的に整備し、住民意見が変わっても対応できるようにしては」「この場所でビジネスをしていくという発想も持ちながら考えることも大事」「他県からは、住田町は木造仮設住宅をいち早く建築した町として知られている。少しでも残して、活用するのは賛成」といった意見が寄せられた。
 また、地域要望を最大限尊重すべきとの発言も。町側は、住宅解体前には、払い下げを行う計画があることも明らかにした。
 この日の会議では、今後改築事業を進める上有住地区公民館の設計に関する意見交換も行われた。次回の開催は、来年2月ごろを計画している。