「副業」切り口につながりを 〝案内人〟介して都市在住者来訪 住田町

▲ 都市部在住者が住田町を訪れ、副業の可能性などを探る現地ツアー

 住田町による関係人口創出・拡大を目指す「現地ツアー」は25日から、町内で始まった。今回は東京や名古屋で「関係案内人」が昨年実施した住田町に関する説明会に参加した都市在住者が訪れ、町内の現状や文化・自然資源などについて研修。副業を通じた地方とのつながり創出を見据えている参加者が多く、再生エネルギーや教育分野などでの地域住民や地元団体などとの連携の可能性を探る。ツアーは、26日までの日程で行われる。

 

関係人口の創出見据え


 関係人口とは、都市部から移住した定住人口や観光で訪れた交流人口にとどまらず、都市部などに生活や仕事の拠点を置きながらも他地域にかかわる人材として、近年注目を集めている。総務省では、持続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する地方自治体の取り組みをモデル事業に採択している。
 同町は昨年に続く採択で、本年度は「都市住民らの地域への関心を醸成する取り組み」に着手。住田町とかかわりがある企業やNPOなどが「関係案内人」となり、都市住民らの関心醸成などを目指して東京や名古屋で住田の魅力を伝える説明会を企画し、計約90人が参加した。
 今回のツアーは、実際に住田に訪れて理解を深めてもらおうと企画し、説明会参加者のうち7人が来訪。町や同町の一般社団法人・SUMICAの職員が受け入れ、案内役を担った。自然資源を生かしたエネルギー分野や教育、地方とのつながり創出など、自らの副業充実を見据えた参加者が目立った。
 到着した一行は、世田米のまち家世田米駅で自己紹介を行った後、町内の現状について研修。町企画財政課の佐々木淳一課長補佐が説明し、町が独自に整備した木造仮設住宅や森林資源の活用、町内小中高校の独自教科である地域創造学などを紹介した。
 今年3月末で被災者の原則的な入居期限が終了を迎える木造仮設住宅の利活用に関しては、多くの参加者が関心を寄せた。別の場所に移動して建築する際のコストや、住田滞在時に拠点とする「サテライトオフィス」のあり方などについて意見交換が行われた。
 さらに参加者からは「関係人口で何を求めるか」との声も。佐々木課長補佐は「地元住民に『こんなことをすればもっと充実できる』といった新しいアイデアなどの気づきをもたらしてくれるのも一つの役割と思っている」と述べた。
 住田とのつながりを持つ関係人口の〝案内人〟で、一般社団法人Work Design Lab=東京都=の代表理事を務める石川貴志氏は「住田での副業の可能性はとてもあると思う。ただ、人の出会いからしか始まらない。SUMICAのような地元のコーディネーター役が機能すると、地域の現状に人が入ってくる」と、今後に期待を込める。
 神奈川県在住で、都内の商社に勤務する佐藤隆さん(34)は「バイオマス資源を循環させる仕組みを町として主導していると聞き、気になっていたのでツアーに参加した。町を挙げた取り組みは、まだ少ない。自分の副業につなげるためにも、もっと町の可能性や課題を探り、どこの団体とつなげたら面白いのかなどを考えたい」と話していた。
 26日は世田米商店街などの「まち歩き」に加え、まち家世田米駅では町内の教育分野やSUMICAの活動に関する座学研修を実施。参加者が感想や町内の課題を出し合うワークショップも行う。