住田産カエデ利活用を 大学関係者や住民協働で 来月には樹液の採取

▲ 今後の採取活動などを見据えた調査活動を展開

 住田町で未利用広葉樹の一つである町内のカエデを生かし、メープルシロップ加工などを見据えた取り組みが広がっている。29日には、岩手大学や地元の森林団体関係者が各地を回り、調査活動を展開。町内の独自教科である地域創造学の一環で住田高校生らも関心を示している動きと合わせ、来月には町内で採取活動を、3月には活動報告会や意見交換の場を設けることにしている。

 

シロップ加工など見据え

 

 メープルシロップは、カエデ類の樹液を煮詰めた自然素材の甘味料。カナダ産が主流だが、近年は国内の中山間地で地域活性化や特産品開発の一環で生産に挑む動きが出ている。
 住田町内にもカエデをはじめとした広葉樹林が多くあり、その活用策として昨年から樹液を採取する取り組みを試験的に実施。昨年から、岩手大学農学部森林科学科4年で、森林保全生態学研究室に所属する木村愛梨さん(22)=盛岡市=が町産の「メープル事業」をテーマとした研究・卒業論文制作に取り組み、町も協力しながらさらなる活用を模索してきた。
 住田高校でも本年度、地域創造学の一環で町内産メープルシロップを生かした調理実習が行われたほか、利活用に関して研究を進める生徒も。町教委による「森の達人講座」でもカエデについて学ぶ会が設けられたほか、すみた森の案内人の会のメンバーも採取や加工を通じて地域活性化につなげられないか検討を重ねてきた。
 調査活動には、岩手大学農学部の松木佐和子講師や木村さん、町林政課職員、森の案内人の会メンバーらが参加。世田米と下有住の各山林を訪ね、樹液採取が可能なカエデの状況などを確認した。
 松木講師はこれまでも、森林認証に関する調査の一環で町内広葉樹を調べたことがあるという。「最近はかなりシカの食害が増えてきている。防ぐためにも、人が山に入る機会をつくることが大事」と指摘する。
 そのうえで「樹液はシロップだけでなく、石けんなどさまざまな可能性がある。高校生らをはじめ、多くの住民が興味を持ち、山菜とりのような感覚で採取や加工が進めば」と語る。
 木村さんは「国内で盛んな(埼玉県の)秩父と比べても、資源量や人材は豊富にあると思う。多くの人たちが協力し合い、活動が広がってほしい」と期待を込める。
 町もこうした活動を支援し、未利用材活用を後押ししたい考え。今後は高校生らの参加も受け入れながら、来月下旬には採取活動を行う。3月には本年度の活動を総括する場を設け、新年度以降の展開につなげることにしている。