アジアの芸能と共演へ 日頃市の「小通鹿踊り」 大船渡(別写真あり)

▲ 東京でのイベントを前に、藤田氏(左奥)が見つめる中で小通鹿踊りを練習する保存会メンバーら

 大船渡市日頃市町に伝わる市指定無形民俗文化財「行山流小通(こがよう)鹿踊り」は『春分の日』の3月20日(金)、東京で開かれる民俗音楽フェスティバル「打つ!踊る!!」に出演する。アジアの音楽・芸能をテーマにしたイベントで、小通鹿踊りは日本の芸能を代表して舞台に立つ。本番に向け、小通芸能保存会(三条勝芳会長、会員18人)は連日練習を行っており、8日夜にはイベントをプロデュースする東京音楽大学学長特任補佐の藤田崇文氏(50)が視察に訪れた。藤田氏の激励を受け、同保存会は地域が誇る鹿踊りを万全な状態で披露しようと決意を新たにしている。

 

3月に東京音大で披露

 

 小通鹿踊りは、嘉永5(1852)年に小通地域の松右衛門が、東磐井郡大原山口集落(現・一関市大東町大原山口)の喜平、喜三郎という2人の師匠から伝授されたもの。中立を中心とした八つ頭の踊りで、鹿頭や締太鼓はほかの鹿踊りよりも小さめであり、軽快な唄とリズミカルな動きが特徴となっている。
 地元に鎮座する五葉山神社の式年大祭をはじめ、市内外のイベントなどで披露。東日本大震災後の平成25年と28年には埼玉県和光市のイベントに出演し、28年の舞台ではオーケストラとの共演も果たした。
 藤田氏は、小通鹿踊りが和光市でのイベントに初出演した当時、同市民文化センターの館長を務めており、これを機に小通芸能保存会と交流。「170年近く伝統芸能を伝承しているのが素晴らしいし、踊り手たちが打つ太鼓の響きに魂を感じる」と小通鹿踊りの魅力に引かれ、多くの人に見てもらおうと、28年と今回のイベントへの出演を打診した。
 今回のイベントは、東京音楽大学が主催し、文化庁の大学における文化芸術推進事業の一環で開催。同大学池袋キャンパスA館100周年記念ホールを会場に、日本、中国、朝鮮半島、インドネシアのバリやジャワの芸能、音楽を繰り広げる。
 小通鹿踊りは、日本の芸能を代表して出演。五年祭や大きな舞台でのみ演じる出足部分の踊り「かつぎ桴(ばち)」も含む披露を予定しており、保存会では先月下旬から毎夜、小通地域農業集落交流センターで練習を行っている。
 8日は、保存会メンバーや地域住民ら約20人が参集。藤田氏はビデオ撮影を行い、8人の踊り手たちによる練習を見守った。
 踊り手たちは、一つ一つの動きを確認しながら、約20分にわたる鹿踊りを一通り演舞。額に汗を浮かべながら、リズミカルな太鼓の音と息の合った唄を響かせた。踊り終えると、藤田氏は「素晴らしい」と声をかけ、本番当日の打ち合わせも行った。
 藤田氏は「皆さんがずっと大事にしてきた伝統を東京の方々に見ていただきたいし、西洋音楽を学ぶ大学で、日本やアジアに伝わる音楽を紹介する役目も果たしたい。当日がとても楽しみ」と語った。
 三条会長(72)は「今回は、難しい動きも入れようと練習を重ねている。小通の先輩方が続けてきた鹿踊りを100%の状態にし、東京で披露したい」と意気込んでいる。
 「打つ!踊る!!」は、3月20日午後1時30分開演。入場無料だが、同日午前11時から配布する整理券が必要。問い合わせは東京音楽大学文化庁補助事業推進室(bunka.am@tokyo-ondai.ac.jp)へ。