「成年後見人」もっと身近に 制度活用へ講演会開催 地域連携の必要性など理解 住田で

▲ 小野寺氏(写真奥)が二戸地域での事例を交えながらアドバイス

 住田町社会福祉協議会による成年後見講演会は22日、町役場町民ホールで開かれた。高齢化社会が進行する中、さまざまな契約手続きに対する円滑な対応や見守り充実に向け、住民や福祉機関などが成年後見人を担う必要性が高まっており、町内では「町民後見人」の育成が進む。訪れた地域住民は、気仙全体での権利擁護支援の地域連携ネットワークの重要性などを確認しながら、制度活用への意識を高めた。

 

二戸の事例に学ぶ

 

 成年後見は、認知症高齢者や知的障害者をはじめ判断能力が不十分で、自分一人では契約や財産の管理などが難しい住民を支援する制度。親族のほかに弁護士や司法書士らが担っているが、高齢化の進行や制度改正などに伴い、一定の知識などを身につけた住民を養成する機運が高まっている。
 同町の人口は昨年12月末で5384人で、年間100人ペースで減少。一方で、65歳以上人口はほぼ横ばいであることから、高齢化率が上昇を続け、20年前の平成12年度には32・68%だったのが、44・2%となった。町内2152世帯のうち1人暮らしは400世帯を占め、高齢者の割合が増えている。
 町や町社会福祉協議会は本年度、昨年度に開催した後見人養成講座修了者を生かした町民後見人活用につなげる体制整備を本格化。顔見知りの地域住民同士で支え合う体制に向けた住民啓発の一環として、講演会を企画した。
 気仙3市町などから約40人が出席。前半は「この町で、安心して、ずっと暮らしたい!」と題し、特定非営利活動法人カシオペア権利擁護支援センター(二戸市)の小野寺幸司所長が講演を行った。
 小野寺氏は身近な問題として、認知症などにより判断能力が不十分なために▽施設に入りたいが一人で契約できない▽金融機関で「本人以外は預金は下ろせない」と言われた▽保険金の受け取りが必要だが、一人では手続きができない▽遺産分割や相続手続きが自分の判断ではできない──などを例示。高齢化社会の進行により、成年後見制度の利用ニーズは増加するとの見方を示した。
 カシオペアセンターでは、27年度から「市民後見人」が受任している実績にも言及。後見人だけでなく、社会福祉士や法人などと一緒になって対応を進めている現状も示した。
 活動紹介の一方で「全国的にはあまり利用されてこなかった。必要な人はいるけれども、制度に結びついていない」とも指摘。権利擁護支援を行う地域連携ネットワークを構築する必要性も強調し、気仙をはじめ県内では設立が広がっていない中核機関の立ち上げに期待を込めた。
 このほか、小野寺氏は「財産管理に関する事務を、本人とともに成年後見人らが行うことで、本人を守るための制度」「認知症になっても障害があっても、住み慣れた地域で安心して人生を送るための生活資源として活用を」ともアドバイス。後半は、制度活用の事例を分かりやすくまとめた演劇の披露も行われた。
 町社協や町は新年度、町民後見人制度の運営推進体制について検討を進める方針。合わせて、昨年度の養成講座修了者との連携も強化することにしている。
 講演会に出席した下有住の千葉直市さん(68)は養成講座を受講し、町民後見人としての研修に励んでいる。「親族の後見は一人でもできたが、他人に関しては家族らとの調整で難しさを感じた。後見人が男女ペアで相談しやすい体制をとったり、チームや組織として活動していくことが重要」と話していた。