新型コロナウイルス/「早く収束を」切実な声 売り上げ9割減の事業所も 休校・自粛続きで苦境 気仙

▲ バス会社はバス車内の手すりや肘掛けのアルコール消毒など感染予防対策を徹底=陸前高田市


 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校やイベント自粛措置の長期化で、気仙の経済活動にも深刻な影響が広がっている。児童生徒の通学や観光を支えるバスは利用頻度が激減し、売り上げが前年同月比で9割減という事業所もある。旅行や物産品購入の動きも鈍く、4月下旬以降の行楽シーズンにまで長引けば、影響は計り知れない。先行きが見えない中、感染防止策を徹底するしかない各事業所からは「早く収束を」と切実な声が漏れてくる。

 

バスや旅行、物産品に影響

 

 陸前高田市内のバス会社は、今月の売り上げが前年同月よりも9割以上落ち込み、大打撃を受けている。事業者は「開店休業状態。今後の不安も大きい」と表情を曇らせる。
 市内小中学校4校の児童・生徒が乗るスクールバスを運行しているが、今月3日からの臨時休校を受けて運休。各校の卒業式、修了式の日のみバスを走らせた。
 2月下旬から貸し切りバスの予約キャンセルも相次ぎ、今月の運行本数はゼロ。4月以降の行楽シーズンは、同社にとっても閑散期だった冬から巻き返すためのかき入れ時となるが、貸し切り予約の動きは現時点で鈍いという。
 所有するバスはスクールバスを含め、28〜55人乗りの計13台で、維持管理費が重くのしかかる。需要が伸びない逆風の状況が長期化した場合、商売道具のバス売却なども迫られる。
 市教委は市内小中学校について、予定通り4月上旬から新学期を始める方針。これを受け、スクールバスの運行も再開する。感染予防のため、手すりや肘掛けなどのアルコール消毒、運行前後の換気、運転手の検温を徹底する。
 事業者は「学校再開のめどが示されたのはありがたかったが、収束の見通しは立っておらず、決して安心できない。万が一さらに感染が拡大して、再び休校などの措置が取られれば立ち行かなくなる。落ち着いてくれることを祈るだけ」と話す。
 また、岩手県交通は、新型ウイルス感染拡大を受けて路線バス減便などの対応にあたっている。4月1日(水)からは大船渡盛岡線(大船渡―遠野―盛岡)の県立大船渡病院午前7時16分発、盛岡バスセンター午後2時30分発の便について、当面の間、運休することとしており、現行の往復4便が3便に減る。例年ならば年度変わりで流動の多い時期ではあるが、今年は利用が落ち込んでいるといい、他の路線でカバーできる時間帯であることも踏まえて決めた。
 また、東京池袋までの「けせんライナー」など、長距離の夜行高速バスについては、アルコールなどによる拭き取り消毒に加え、二酸化塩素発生装置による除菌作業も始め、「今後とも皆さまに安心してご利用いただけるように努めていく」としている。
 新型コロナウイルスの感染拡大は、旅行業界にも大きく響いている。大船渡市の岩手開発産業㈱(岡田真一社長)の観光部・岩手開発観光には、2月中に約40件、今月に入ってからは約90件のキャンセル連絡があった。
 3月といえば、本来は子どもの春休みに合わせた家族旅行などで繁忙期となる旅行業界だが、キャンセルの増加に加えて新規の予約もなく、普段はにぎわう岩手開発観光の窓口も静か。鳴る電話もほとんどがキャンセルの連絡だ。
 ディズニーランド(千葉県)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪府)も休園が続き、それに伴い旅行を取りやめるという連絡もあるという。感染の収束めどが立っていないことから4〜6月分の予約もキャンセルとなっており、先行きは見えない。
 震災後の復興需要とは違い、感染収束後の特需にも期待はできない状態で、岩手開発観光の三条義照部長は「例年は5月の連休もかなり人の動きがあったが、現状ではそれに期待はできない。めどはつかないが、とにかく早く収束してほしい。収束後は、再び旅行会社を活用してもらえれば」と話す。
 住田町からの委託を受け、道の駅・種山ケ原ぽらんや滝観洞観光センターや学校給食センターの調理・炊飯加工業務を運営している住田観光開発(松田栄代表取締役)。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、いずれの施設運営にも影響が及んでいる。
 国道397号沿いの奥州市境に構えるぽらんでは今月中旬から、感染防止策として店内に並ぶ菓子類などの試食コーナーを撤去。松田栄代表取締役は「来店者が商品の前を通り過ぎてしまう。購買意欲の低下につながっている」と影響を語る。
 ただ、今月は地場野菜などの出品が少ない閑散期にあたり、売り上げへの影響が比較的小規模にとどまっている。また、今冬は積雪が少なく、駐車場に立ち寄る車両の数には落ち込みはないという。
 4月下旬以降はイベント開催に加え、山菜類やアツモリソウなどを求める客が増える。松田代表取締役は「大型連休前には収束してもらわないと…」と、早期沈静化を願う。
 学校給食センターでは今月3日以降、小中高校への給食調理提供がストップ。町と年間委託契約を結んでいるため、経営面への影響は最小限にとどまっている。
 この間、長期休業中と同様に、調理設備のメンテナンスや職員研修を実施。夏休みが削減される可能性も考慮した対応という。センターでは通常、約10人が従事。この中には子育て世代も含まれ、町内の学童施設が閉所していることから、有給休暇を取得する動きも見られる。