課題と今後は─新型コロナウイルス/各界トップに聞く⑧ 住田観光開発㈱・松田栄代表取締役

「いつか来る収束に備えて」

 

 ──新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、運営している観光施設にはどのような影響が出ているか。
 松田 上有住の滝観洞については、政府による緊急事態宣言が全国に拡大となった段階で休洞措置を取った。滝観洞は完全にレジャー施設なのでやむを得ない。滝観洞には、例年であれば大型連休時期には1000人ぐらいが訪れているが、今年はゼロ。現在も休止は続いているが、混雑のピークは過ぎたので今月11日には入洞を再開したいと思っている。昨年度は入洞者数が1万人を超え、本年度も1万人突破を目標に掲げてはいたが、厳しいだろう。なんとか近い数字には持っていきたい。
 今回の新型ウイルスの影響に関しては、収束したとしても東日本大震災後のような〝特需〟が見込めそうにないことが一番の問題だと思っている。今後、緊急事態宣言が解除されても、以前のようなにぎわいが戻るのには時間がかかるのではないか。一度離れたお客さんが戻ってくるのは時間がかかる。積み上げるのは時間がかかるが、崩れるのは一瞬だ。
 観光業として「にぎわいをつくって地域の元気につなげていく」「地域にお金を回していく」という思いをもっており、当社の経営理念としても掲げているが、新型ウイルスの影響によってそれができないことが一番つらい。お客さんが来ない、ものが売れないというだけでなく、地域の元気、活力が失われていくのではという不安があり、目に見えないウイルスという敵に対して正直、腹立たしい気持ちがある。
 ──国、県に対して訴えたいことは。
 松田 何よりも、先が見えないことが不安。緊急事態宣言についても、どうなれば解除になるのかなど、一般の人にも先が見通せるようなものを具体的に出してもらえればありがたいと思う。あとは、とにかくスピード感を持って補助金の交付、事業を進めてほしい。国にきちっとしたリーダシップを発揮してもらえれば、私どもとしても頑張っていける。
 ──外出、イベントの自粛が続いて人の動きが少なくなり、観光業にとっては非常に厳しい状況にある。会社として、どのような取り組みを展開しているか。
 松田 こうした時だからこそできることを進めていこうと取り組んでいる。道の駅・種山ケ原ぽらん内のレストランもテークアウトを始めており、今後、感染拡大が収束して町内でのイベントが始まってくれば、例えば町の産業まつりなどでテークアウトメニューを提供したりということもできる。
 また、現在は株主を中心にダイレクトメールを送っている。持ち帰り用「鶏ハラミらーめん」が販売開始となったので、そうした商品を、外出自粛により帰省できない家族に贈ることでつながりを持ってほしいということも働きかけている。
 ──県内各地の道の駅、観光施設との連携は。
 松田 県内にもさまざまな道の駅があり、企業同士のつながりもあるので、そうした方々と連絡を取り合って情報を共有したりしている。こうした状況なので、これまでに培ってきた「横のつながり」で助け合い、手を組んで乗り越えていこうという動きも出てきている。
 今までのつながりがここに来て強くなったので、これが収束後にはより強固なものになっていくと思うし、今後もそうした連携を生かしていきたい。そうすれば新たなビジネスも展開できるのではないか。
 いつか来る収束に備えて、今は我慢の時。何も動かないというわけではない。こういう時こそ、あきらめるのではなく、何かに取り組むことでチャンスが出てくるし、そうした動きは通常の営業にも生かされてくると思う。もがいて、知恵を出し合って、状況を打破していくことを考えている。
 「アフターコロナには、必ず大きなイベントを企画する」という気持ちを持っているので、町民や観光客の皆さんには、それまで待っていてほしい。
(聞き手・清水辰彦)