新型コロナウイルス/全業種で影響深刻に 事業所アンケート結果 市と商議所が実施

 大船渡市と大船渡商工会議所は、会議所会員事業所を対象に5月に実施した新型コロナウイルスの影響に関するアンケート調査をまとめた。約600事業所から回答が寄せられ、61・5%が5月以前から「影響が出ている」と回答。外出自粛や移動制限の影響をいち早く受けた飲食や宿泊だけでなく、卸売りや小売り、製造などあらゆる分野に影響が広がり、地域経済全体に深刻な打撃を与えている実態が改めて浮かび上がった。7月に入っても回復の動きは鈍く、長期化の様相を呈しており、感染防止徹底の継続とともに地元消費喚起などの対策が急がれる。

 

 市内では3月以降、都道府県をまたいだ移動制限や外出自粛の要請などにより、業種・業態を問わず企業活動全般に新型ウイルスの影響が及んだ。会議所などでは地域経済や中小企業の状況を把握しながら適切な支援に取り組むとともに、国や県に必要な要望を行うためにアンケート調査を行った。
 対象事業所は1618事業所で、市内全事業所の65・8%にあたる。回答数は592事業所で、回収率は36・6%だった。
 経営面で「影響が出ている」と回答したのは61・5%。「今後影響が出る可能性がある」も、22・3%に達した。
 主要業種別で最も割合が高かったのは飲食で95・1%。卸売りや宿泊業でも80%を超えた。飲食では2月中から客が減り始め、7月を過ぎても戻りきっておらず、影響の深刻さだけでなく長期化も追い打ちをかけている。
 飲食や宿泊、小売り、サービスは、主に市内での外出自粛や移動制限による要素が大きく、卸売りや製造、運輸は首都圏での経済動向や市外への外出自粛、移動制限が反映されているとみられる。
 影響が出ている事業所に前年同月との売り上げの比較を聞いたところ「50%以上減」が43・1%。「30%以上減」は22・5%で、「20%以上減」は12・6%だった。
 特に、飲食の82・1%、宿泊の84・6%が「50%以上減」と回答。建設も45・2%に達したほか、製造、卸売り、小売り、運輸、サービスはいずれも20%を超えた。
 影響の具体的な内容(複数回答可)をみると、最多回答は「需要や消費の低迷による売上げの減少」で74・2%。次いで「資金繰りの悪化」が34・1%、「予約や受注のキャンセル」が30・8%だった。「海外からの仕入遅延または困難」は全体では8・8%の一方、建設や製造、小売りで回答割合が高かった。
 対策の動き(同)では「各種助成金の活用」が52・5%と最も多く、次いで「融資制度の利用」が26・1%、「従業員の時差出勤や勤務時間の短縮」が17・6%、「雇用調整助成金などの申請」が16・8%と続いた。「人員削減」は5・2%だった。
 雇用調整助成金は製造や小売り、飲食、サービスで目立ち、影響収束後の労働力維持を見据えた対応が顕著に。勤務時間の短縮・休業は飲食や小売りに多く、消費低迷による対応と考えられる。
 また、全事業者に聞いた感染防止策の実施状況(同)では「手洗い、うがいの徹底」「マスク着用の奨励」がいずれも89%。アルコール消毒液の設置も82・3%に上り、基本的な予防策は徹底されていることが分かった。一方で「テレワークなど勤務体系の見直し」は1・4%、「BCP(事業継続計画)の整備・見直し」は5・9%と低かった。
 国では、1カ月の売り上げが50%以上低下した事業所に対して持続化給付金制度で支援。自由意見では20~40%程度減少した事業所への支援を求めるコメントが複数寄せられたほか、漁業者向けの支援を望む回答も目立った。
 市は5月以降、独自の経済対策として売り上げが減少した事業者に一律定額30万円を支給する「中小企業事業継続支援金」を創設。現在対象は2000事業者を超え、市内の9割近くを占める。申請は8月まで受け付けている。
 また、商工会議所では相談体制を強化し、今月も引き続き土・日曜日にも対応。融資制度や各種給付金の申請支援にあたっている。 同商議所の齊藤光夫事務局長は「雇用規模が大きい建設や食品加工製造などを含め、全業種に影響が出ていることが明らかになった。単純な資金繰りだけでなく、売り上げや利益確保につながる支援策も重要になっている。新型ウイルスとの〝共存〟も見据えながら、地元消費喚起の方策を考えていかなければ」としている。業種別の影響に関する回答は別掲。