夏の高校野球県大会/大会での経験を今後の糧に 気仙の審判員2人がジャッジ

▲ 代替大会で審判を務めた水野さん
▲ 代替大会で審判を務めた三浦さん

 新型コロナウイルスの影響で中止となった全国高校野球選手権岩手大会の代替大会「夏季県高校野球大会」(7月13日〜同26日)の準決勝で、大船渡市盛町在住の公務員・三浦寿希哉(じゅきや)さん(20)と、住田町上有住在住の会社員・水野司悦(しえつ)さん(37)が審判を務めた。これまでとは一変した形で行われた大会での経験を糧に、2人はさらなる技術向上と次世代への継承を目指す。

 

準決勝・盛岡大附─花巻東戦で

 

 三浦さんは、高田高校に入学した平成27年に大船渡市野球協会審判部に登録。専門学校卒業後は県職員となり、現在は同市の県沿岸広域振興局大船渡地域振興センターに勤務しながら、各種大会で審判員としての技術向上にも努めている。
 先月13〜26日に無観客で実施された同大会では、計3試合で球審など審判を務めた。初体験となった準決勝では、県営球場(盛岡市)で行われた盛岡大附─花巻東の試合で2塁塁審を担当した。
 三浦さんは「負けたチームの思いを背負い戦う選手らの気持ちを考えると、プレッシャーを感じ緊張した。観客がいないぶん審判の声が通るなどいつもと違う環境だったが、責任感を持って審判にあたった」と語る。
 審判員は試合以外での手袋、マスクの着用や、道具の消毒作業、3密回避など、新型ウイルスへの対策を徹底した。「何が本当に正しい感染対策か分からない」という状況下で、球児らに集大成発揮の場を用意したいという主催者側の思いに応えた。
 例年夏の大会の準決勝以上は、通常は経験豊富なベテラン審判員に任されるが、今大会では若手の審判員にも大役が回り、三浦さんは「将来同じような状況に置かれても次世代が対処できるように、という意図もあったと思う。今回試合に立たせていただいたことに感謝し、〝先輩たちはこうやってコロナを乗り切った〟ということを語り継いでいきたい」と力を込める。
 一方の水野さんも、三浦さんと同じく準決勝の盛岡大附─花巻東戦で1塁の塁審を担当。「いつもと違う雰囲気の夏だったが、集中してやろうと臨んだ」と試合当日の心境を振り返る。
 住田高校卒業後、水沢市(現・奥州市水沢)の県立高度技術専門学院(現・県立産業技術短期大学校水沢校)に入学。卒業後、遠野市内の企業に就職した。
 小学校から高校まで野球部に所属して白球を追いかけた水野さん。知人の紹介で28歳の時に審判となり、学童、少年野球で経験を積んで高校野球、社会人野球と、ステップアップしてきた。
 今夏は、地区予選から数えると4度、グラウンドの土を踏んだ。感染対策が取られたスタンドは例年とは違って静かで、いつもとは違う夏だった。
 「応援がないというのはやはりさみしいが、今年は開催自体が危ぶまれた中、『大会ができてよかった』と思うし、そうした場に立たせてもらったのはありがたく、大会に協力できてよかった」と夏の舞台を振り返る。
 球児たちの一投一打を誰よりも近くで見届けている水野さん。「選手の一生懸命な姿をみると、自分も頑張ろうと思える。準決勝でも塁審に立たせてもらったが、自分自身まだまだだなとも感じた。一試合一試合、完璧なジャッジができるようになっていきたい」と力強く目標を口にした。