異例の夏で人出少なく 帰省控えも背景に にぎわい欠く気仙の観光地

▲ 碁石海岸レストハウスの駐車場。大型バスに対応したスペースも、乗用車の利用が目立つ

 新型コロナウイルス感染症の影響で、古里への帰省を控える動きが全国的に広がり、自粛ムードが漂う今年のお盆休み。夏祭りの開催や海水浴場の開設を見送るなど、感染症予防対策に伴う「異例の夏」を迎えている気仙でも、例年に比べて帰省客や観光客の姿は少なく、にぎわいを欠いている。

 

大船渡


 大船渡市末崎町の碁石海岸レストハウスの営業を担っている㈱小川の小川廣文社長は「日によって変動はあるが、お客さんの入りは例年の半分以下。なかなか厳しい」と、ため息をつく。
 レストハウスは新型ウイルスの影響で3月9日から休業し、5月21日に再開。物産品が並ぶ1階は入り口と出口を分けるなど、来訪者の動線が一定となるよう誘導。2階の食堂はこれまでよりも、座席の間隔を空けるなど、対策を講じてきた。
 もともと、来訪者の半数以上は県外からの観光客が占めていた。個人客は以前よりも増えている動きを感じるものの、団体客の落ち込みが激しい。バス対応の駐車場にも、個人の乗用車ばかりが並ぶ。
 小川社長は「団体は30~40人が訪れるが、今はバス1台が来ても乗客は影響が出る前の半分以下。バス会社や旅行代理店も大変では」と話す。
 岩手県内で感染者が確認されると、県外からの団体ツアーキャンセルや、修学旅行での来訪見合わせといった動きもあった。現在の頼みは、気仙をはじめ県内からの客をどう伸ばすか。小川社長は「何もかも中止や延期のままではいけない。まずは県内の人を呼び込む手を打っていかないと」と語る。
 同社は、赤崎町のレクリエーション観光施設・ふれあいランド尾崎岬の指定管理も担っている。宿泊滞在ができるバンガローやコテージ、バーベキュー炉などがあるが、現在は原則、県内在住者のみに限定している。
 限定はゴールデンウイークにも実施し、利用は例年の2割ほどにとどまった。夏場に入って目立つのは、1人2000円分が割り引きとなる「岩手(じもと)に泊まるなら地元割クーポン」。すでに10件を超える利用があるという。
 また、末崎町の三陸復興国立公園内にある碁石海岸キャンプ場では8~15日は予約で埋まっている。今年は、自動車対応のオートサイトは7~8サイト、広場兼フリーサイトはテント15張を上限とし、例年よりも間隔を空けているため、全体としての利用者数は少ない。
 客層に目立った変化はなく、県外からの来訪者も多く、ファミリー層の利用でにぎわう。予約や受付時には感染防止対策で利用者の確認やスタッフ側からの説明があり、例年よりも時間を要しているという。
 三陸町越喜来の「道の駅さんりく」は、8日から道の駅登録20周年を記念してホヤの特売を実施中。道の駅を運営する三陸ふるさと振興㈱(中井昭樹代表取締役社長)によると、10日は用意した分が完売する人気ぶりだったという。
 8~10日の3連休は県外からの車両も見られたものの、同社では「例年よりは少なめで、新型ウイルスの影響が感じられる」とする。お盆期間中は感染症対策にも改めて力を入れ、16日までホヤのセールも実施し、来客に期待を込める。

 

道の駅高田松原のお盆期間の来店者数は当初の想定を下回る見通し

陸前高田


 月間で平均7万人の集客を誇る陸前高田市気仙町の道の駅「高田松原」も苦戦を強いられている。お盆期間の来店者数は当初の想定を下回る見通しだ。
 新型ウイルスの感染拡大で4月中旬から5月下旬まで臨時休業。営業再開後、1日当たりの来店者数が最高となったのは、7月23~26日の4連休中の5200人だった。
 昨年9月にオープンし、初めて迎える今年のお盆は重要なかき入れ時。館内では地元の子どもたちに楽しんでもらおうと、広田湾内の魚13種類を展示する「広田湾のちいさな水族館」を開催中で、飲食店では夏限定のテークアウト品をメニュー化するなど、安全に買い物を楽しんでもらう感染対策をとるなど、集客の工夫を図る。
 高田町の商業施設・アバッセたかた専門店街も前年より客数が落ち込んでいる。8日から16日までは恒例の「お盆セール」を展開。期間中は、店内を巡るウオークラリーイベントを開催し、これまでに子どもらを中心に約70人が参加しているという。
 運営する高田松原商業開発協同組合の伊東孝理事長は「帰省者数が例年より少ないためか、にぎわいを欠いている。外からお客さんに来てもらうのが難しくなっており、地元での消費を促すような取り組みが必要だ」と先を見据える。

 

盆期間も感染対策を講じたうえで入洞を受け入れている滝観洞

住田


 国内屈指の鍾乳洞として知られる住田町上有住の滝観洞には、8日から10日までで延べ350人ほどが訪れた。毎年、盆時期には帰省者や観光客でにぎわいを見せるが、今年の入り込みは前年の6割ほどにとどまっている。
 例年であれば、客層は各地からの帰省者が多い。今年は帰省が少ないが、ここ数日続く暑さの中で涼を求める人たちが訪れている。盆期間は休まず営業。マスク着用や手指消毒の徹底など、感染対策を講じたうえで受け入れている。