祈念公園ににぎわい呼び込む 道の駅と津波伝承館が1周年

▲ シルバーウイーク最終日の22日も県内外の人が訪れた道の駅「高田松原」

 陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内にある道の駅「高田松原」と東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」は22日、ともにオープンから1年を迎えた。県内唯一の国営追悼・祈念施設が入り、津波の教訓を後世に伝えるとともに三陸沿岸のゲートウェイを担う重要な観光施設。新型コロナウイルスの感染拡大後、誘客に苦戦してきたが、19~22日のシルバーウイークは施設間で相乗的に人を呼び込む強みを生かし、多くの人でにぎわう光景が戻った。

 

シルバーウイークは上々の人出

 

 シルバーウイーク期間中の19~21日の3日間、道の駅の来店者数は約1万3000人、津波伝承館の来館者数は約5000人。特に21日は、同館の来館者数が2000人を超え、今年4月以降最多の入り込みとなった。
 同ウイーク最終日の22日、家族3人で来園した青森県八戸市の下屋敷優子さん(65)は「初めて訪れたが、公園はきれいで驚いた。道の駅は品数が大変豊富でまた来たいです」と満足げな様子。一方で「津波伝承館も見学し、以前テレビで見た津波の光景がよみがえった。震災を決して忘れてはいけない」と真剣な面持ちで語った。
 道の駅では19~22日の4日間、1周年記念の感謝セールを実施。広田湾漁協が取り扱うエゾイシカゲガイやワカメなど水産品は全品2割引きで、お土産品をはじめ各種商品も特価で販売した。
 22日は一部店舗でさらに割引きを行い、誘客を図った。食堂「たかたのごはん」は、テークアウト品の「かつおの生姜漬け丼」を500円のワンコインで、イクラやカキがのる「たかた丼」を通常価格から550円引きの850円で提供するなど同日限定のセールを行い、人気を集めた。
 スタッフは「関東圏からの来店者数が伸びており、新型ウイルスの影響で冷え込んでいた消費マインドも回復傾向にある。インターネットなどで発信した情報よりもさらにお得なセールをその日限りで行うなど、『道の駅に行けば何かがある』という打ち出し方で、訪れる楽しさを伝えていく」と力を込める。
 一方、津波伝承館では開館1年を記念し、「伝えたい思い~メッセージボードに寄せられた言葉~」として来館者が同館メッセージボードに記した思いなどを紹介する特別展を27日まで開催中。これとは別に、道の駅側の地域情報スペースでは「解説 東日本大震災津波の時間経緯」(10月11日まで)と題した企画展を催している。
 この秋は、修学旅行などの一環で同館を利用する小中学校が本県内陸部を中心に急増。今月から11月にかけて約150校が来館する予定で、昨年度(昨年9月~今年3月末)よりも3・75倍に伸びている。
 道の駅と津波伝承館は昨年9月、国営追悼・祈念施設の一部とともに開業、開館した。新型ウイルスの感染拡大で一時閉館し、感染症対策を講じたうえで再開。21日時点で、道の駅の来店者数は約57万人、伝承館の来館者数は約21万8000人に上る。
 同館の熊谷正則副館長は「新型ウイルスで先行きが不透明な中で1年を迎えられて感謝の気持ち。年が明ければ震災から10年の節目の年となり、多くの来館が予想される。まずは感染症予防策を徹底し、安全・安心に見学できるような対応を念頭に置く」と先を見据える。