経験生かし復興へ決意 就職氷河期世代の採用第1号 佐々木さんに辞令交付

▲ 戸羽市長から辞令書を手渡される佐々木さん㊨

 陸前高田市は1日、バブル経済崩壊後の就職難を経験した「就職氷河期世代」を対象にした正職員採用試験に合格した佐々木翔さん(33)=高田町=の辞令交付式を開いた。市は氷河期世代を支援する国の動きに呼応して県内に先駆けて採用試験を実施し、佐々木さんは第1号の職員。東日本大震災からの復興、交流人口の拡大へ、佐々木さんはこれまでの仕事のノウハウを生かし「市民に寄り添っていく」と決意する。
 辞令交付式は市役所で行われ、辞令書を手渡した戸羽太市長は「新たな仲間を迎え入れることができてうれしい。仕事はチームで行うもの。分からないことがあれば仲間に聞き、一日も早く職場に慣れ、楽しく仕事してほしい」とあいさつした。
 佐々木さんは、大船渡市大船渡町出身。大学を卒業し、帰省していた時に震災に遭い、津波が古里を襲う光景を目にした。神奈川県内の福祉関係に就職が決まっていたが、内定を辞退し、気仙に残る決意をした。
 その後、大船渡市や同市観光物産協会の任期付職員などとして働き、平成28年の結婚を機に、妻の実家がある陸前高田市に転居。同市が就職氷河期世代の中途採用に乗り出すと知り、試験に挑んだ。
 受験者数107人の狭き門を突破し、税務課に配属された。家族らからも祝福を受け、「妻の父も陸前高田市の元職員で、特に義父母は喜んでくれた。力がみなぎる思いです」と笑みを浮かべる。
 震災発生から9年半以上経過するが、同市の復興は道半ば。「ハード整備は落ち着いた印象だが、『あの日』から時間が止まっている市民もいると思う。心の復興へ市民に寄り添っていく」と佐々木さん。観光分野で働いた経験を踏まえ、「交流人口の拡大などいつか観光にも携わることができれば」と意欲を語る。
 同市は、持続可能なまちづくりに必要な多様な経験、専門性を持つ人材確保を目的に就職氷河期世代の採用試験を実施した。昭和45年4月2日~平成2年4月1日に生まれた高卒以上の学歴を持つ人を対象とし、今年2月1日~28日に募集。書類選考、論文試験、人物試験を5月までに行った。