「命を守る行動」意識高めて 防災訓練に4300人参加(別写真あり)

▲ 自主防災組織の訓練では避難行動などを確認
感染防止対策の一環で避難所内にパーティションを設置

 大船渡市と大船渡地区消防組合主催の防災訓練は18日、市内一斉に行われた。全国的な豪雨災害多発を踏まえ、市としては初めて、豪雨による洪水や土砂災害に備える避難を想定。訓練参加機関の関係者も含めて4301人が参加した。地区ごとの避難所では新型コロナウイルス対策を講じた避難所開設・運営手法を実践したほか、各地域の自主防災組織も住民の避難先の把握や資機材のチェックなどを行い、命を守る行動への意識を高めた。

 

豪雨災害の想定では初

避難所の感染防止対策も

 

 訓練は、災害発生時の安全かつ迅速な避難体制の確立と、行政等の防災関係機関相互による協力体制の確立を図ろうと毎年実施。これまでは地震・津波を想定していた。
 近年多発する豪雨災害を受け、本年度は重点に▽迅速かつ確実な避難および安全確保▽洪水被害に備えた水害防御訓練の実施▽迅速かつ的確な情報収集伝達の確立──を掲げた。国や県、民間事業者、災害時協定締結先などが連携した。
 「台風の接近により前日から大雨が続き、洪水や土砂災害が発生する恐れがあることから、市は『避難準備・高齢者等避難開始』などを発令。市内では、土砂崩れや家屋の損壊などが発生した」との想定で実施。午前7時30分に一斉にスタートし、被害拡大の状況変化は防災行政無線やエリアメールなどで発信された。
 市内11カ所の指定避難所では、新型コロナウイルスの感染防止策も講じ、訪れた住民らを誘導。受付時の手指消毒や体温測定に加え、避難所の「密」を避けるためにパーティションの設置方法を確認するなど、新たな取り組みを行った。
 地域ごとに組織されている自主防災組織では、避難行動要支援者名簿を活用した安否確認訓練に加え、地域内の危険箇所や避難所、避難経路の確認に取り組んだ。炊き出し訓練や、防災行政無線を利用した連絡通話訓練も行った。
 このうち、猪川町の上富岡地域自主防災組織(千葉昇隊長、177世帯)では、市が避難所としている猪川小学校体育館が混雑しているとの想定で、地域住民向けの避難所を公民館に開設。避難者の誘導や、資機材が正常に稼働するかなどを確認した。
 訓練に参加した佐々木秀雄さん(82)は、東日本大震災で赤崎町内の自宅が被災し、平成26年に高台の同地域に自宅を再建。「高いところにいるから安心という時代ではない。訓練で避難経路などを確認することが大切」と話していた。
 同組織では、地域内の各班長に対し、世帯ごとに避難先をまとめた一覧の提出を求めた。この提出をもとに、実際の豪雨襲来時の避難行動の把握に生かす。
 千葉隊長は「今回の訓練で、各世帯の避難予定先を確認できたのは大きな収穫。親戚宅や別の公共施設を考えている住民も見られた。無線機やハンドマイクの電池確認など、細かいところの課題も徹底しながら備えていきたい」と、今後を見据える。
 また、各地の消防団員は河川増水などを想定し、土のうやブルーシートを用いた対策を確認。近年、気仙でも台風接近に伴う被害が相次いでいることから、各訓練会場では緊張感に包まれた。
 市防災管理室によると、一般住民や自主防災組織関係者は3369人、訓練参加機関から932人が参加。「訓練での課題を丁寧に検証し、今後発生しうる大災害に備え、市民一人一人の防災意識の高揚を一層図るとともに、防災関係機関や地域との連携を強化しながら、引き続き防災対策に万全を期す」としている。
 市は、今回の訓練や今後実施する住民参加のワークショップなどを通じて避難所体制を見直し、必要な基準を満たした施設や安全な経路などの選定を進める方針。今後の防災訓練は年度ごとに津波・地震の想定と入れ替えるなどして、市全体の防災力向上を図る。