潮に揺られてまろやかに 小石浜の養殖施設活用 海中熟成ワインの試飲会(別写真あり)

▲ 来場者にワインを注ぐ及川代表取締役㊧
海中熟成の流れなどを示す佐々木さん

 「恋し浜ホタテ」で知られる大船渡市三陸町綾里の小石浜地区で手がけた海中熟成ワインの試飲会が21日夜、大船渡町の「ノイ・マーレ」(新沼崇久代表)で開かれた。ホタテ養殖で用いる耳づりロープのおもり代わりとして3カ月間取り付けた地元産ワインなどが出され、来場者は海中で生み出されたまろやかな味わいを堪能。体験型観光など、地域活性化への可能性も見いだしていた。

 

観光振興への広がりなど期待

 

 試飲会は、小石浜でホタテ養殖を手掛け、その発信にも精力的な県漁業士会長の佐々木淳さん(49)と、大船渡町に醸造所を構えるワイン製造販売の㈱スリーピークス(及川武宏代表取締役)、ノイ・マーレが主催。地域住民ら約30人が訪れた。
 用意したワインは、6月から3カ月間、小石浜にあるホタテ養殖漁場の深さ20〜25㍍で熟成されていたスリーピークスの赤、白の各ワイン。熟成を行っていないワインとの味の違いを確かめた。
 口に含んだ参加者からは「こんなに変わるものか」「〝角〟がとれて丸くなった」などの声が聞かれ、変化を実感した様子。
 ワインを味わった一人で、三陸町越喜来でホタテ養殖に携わる岡田薫省(くにあき)さん(51)は「これからが楽しみ。全国からオーナーを募ったり、交流人口拡大につなげるなど、さまざまな可能性があるのでは」と話していた。
 佐々木さんは海中の潮の流れによる揺れに着目し、4年前から取り組み始めたことや、海中熟成の流れなどを解説。水圧でコルクが瓶の中に入り込まないようにするなど、工夫の一端も明かした。
 そのうえで「海中熟成は、三陸ならではの養殖方法でなければできない。紫外線も少なく、水温変化もゆるやか。潮の流れに揺られてまろやかになる。農業と水産のコラボで新たな観光などの発信につながれば」と、手ごたえを語った。さらに、漁業者の収入増や地域活性化の波及効果にも触れ、来場者に協力を求めた。
 及川代表取締役(41)は「ワインを引き揚げる体験など、観光との組み合わせが面白いのでは。自分が買ったワインを、海中でオリジナルのカラーを出すことができる楽しみなどが広がれば、その時期に合った食事も楽しむことができる」と語り、今後の広がりに期待を寄せる。